「にっぱち」の日々

 2月と8月をひとまとめにした「にっぱち」は、商売の振るわない時を指すという。もちろん、その時期こそが稼ぎ時という業種もあるのだが、真冬、真夏は商いの実入りが少ない頃と俗に言われる▲作物がよく育つ、実がなるという意味での「実入り」もまた、8月は振るわなかったらしい。スーパーに足を運べば、トマトやナスなど高値の付いた夏野菜も多い▲思えば昨年も、夏の盛りにハクサイやキャベツといった葉物の野菜を中心に、ずっと高値が続いた。猛暑と少雨が重なって育ちが悪かったためだが、今年はどうやらわけが違う。8月の中頃から雨が続き、日照不足が響いているという▲長崎地方気象台によると、8月後半の18~29日の日照時間は各地で平年の2~3割といったところで、これでは作物は太るに太れない。先ごろ「50年に1度の記録的な大雨」が降った壱岐市などでは、すっかり雨にやられた作物もある▲昨年の酷な日照りといい、今年の日照り不足や大雨といい、「例年にない」「尋常ではない」といわれることの多い近年の気象を、野菜の値段はよく表している▲もう9月に入り、実りの秋が近づいている。夏野菜を作った側、売る側、それに買う側にとって、振るわない「にっぱち」は暦の通り、そろそろ終わってほしいところだろう。(徹)

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