県教育委員会は3日、小田原市中里遺跡から出土した弥生時代の土器など141点を重要文化財に指定した。同市における文化財指定は148件目(国指定8件、県指定25件、市指定115件)。1991年に始まった本格的な発掘調査から約30年たっての県指定に、市の担当者も「発掘当初から注目されてきた遺跡。ようやく評価されてうれしい」と喜んだ。
今回指定された出土品は弥生時代中期中葉(紀元前3~前2世紀ごろ)のもので、土器66点、石器61点など。
土器については地元でつくられたもの(中里式土器)のほか、近畿や東海、中部、北陸地方など、複数の遠隔地のものもあることが特徴的で、集落を形成する上で各地域との交流があったことが分かる。
石器では「大陸系磨製石斧」と呼ばれる伐採、加工用のおのや、石斧の未製品や製作道具(台石、砥石(といし)など)があり、地元での製作工程が段階的に分かる。また近畿地方の良質な石材「サヌカイト」で製作された石器もあり、他地域との密接な関係をうかがわせる。
県教委は今回、関東地方の本格的な稲作文化の受容がこの時期にあったことや、その背景に近畿、東海地方からの影響を大きく受けていたことなどが分かる良好な資料として評価した。
中里遺跡は2300~2200年前に足柄平野の南東部にあった集落跡で、120年間ほど使われたとされる。
1990年代の発掘調査では居住域、墓域、水田とみられる跡などが発見され、同時期の東日本で最大級の規模であることが分かった。