性接触人数は「べき分布」に従う、長崎大学と静岡大学が調査

長崎大学熱帯医学研究所と静岡大学の研究チームは、日本国内における性接触ネットワークの性質として、一人あたりの性接触人数が「べき分布」に従うことを明らかにした。これは性接触ネットワークがスケールフリーと呼ばれる特徴を持ち、性感染症が蔓延しやすい状態を意味している。

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梅毒やHIVなどは、主に性的接触により伝播する性感染症だ。スウェーデン・イギリス・ジンバブエ・ブルキナファソの4か国での面談調査から、性接触する異性の人数分布は、べき分布(注)に従うことが分かっている。この性質はスケールフリーとも呼ばれ、多くの人々の性接触は少人数(数人以下)との関係に留まるが、一部には極めて巨大な性接触ネットワークを持つ人が存在することを意味する。スケールフリーのネットワークで感染症が伝播する場合、感染確率が非常に低くても流行しやすくなる。公衆衛生にとって重要な問題だが、先の4か国以外の国の現状は不明だった。研究チームはインターネット調査を行い、日本在住の男女それぞれ2,500人(計5,000人)から「人生でこれまでの累計の性接触人数」と「直近三か月間の累計の性接触人数」についての回答を得た。その結果、どちらも性別によらずスケールフリー性を持つことが分かった。また、男性は女性よりも性経験人数を多く申告するという世界的に共通する傾向が、日本でも確認された。今回の研究により、アジア圏で初めて性接触ネットワークがスケールフリー性を持つことが判明し、世界的に普遍性が高いことが示された。この研究は今後、日本での性感染症の拡散予測に役立つことが期待される。注:確率分布の1つでべき乗則に従う。正規分布より大きな最頻値・中央値が分布の端に偏り、なだらかに減少するロングテールを持つ。論文情報:

【PLoS ONE】Is the network of heterosexual contact in Japan scale free?

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