惜しまれつつ消え去った本格軽クロカン「パジェロミニ」 復活はあるのか?!

2代目パジェロミニ2000

王者ジムニーを脅かした三菱 パジェロミニ

2018年に登場し、話題となった新型モデルの1つにスズキ ジムニーがあるが、発売から1年が経とうとする今となっても、納車まで1年かかると言われる人気を維持している。

このように書くと巷に溢れている“ジムニー絶好調!”という記事になってしまいそうだが、今回は少し視点を変えて、かつて王者ジムニーの牙城を脅かす存在だった、三菱 パジェロミニ(以下パジェロミニ)についてお話していこうと思う。

当時の軽自動車としてはかなり贅沢で高性能なつくり

初代パジェロミニVR-II (前期型)

パジェロミニは、1994年、当時売れに売れていたパジェロの弟分としてデビュー。パジェロ譲りのクロカンらしいデザインと、軽自動車らしいかわいらしさを持った丸めヘッドライトを備え、一時は軽クロカン王者であるジムニーをしのぐほどの人気を誇っていた人気モデルだ。

初代パジェロミニVR-II (前期型)

上級グレードに搭載されるエンジンは、1気筒あたり5本の吸排気バルブを持つ、直列4気筒DOHC 20バルブターボがあり、当時の軽自動車としてはもっとも高性能なエンジンを選ぶことができた。

パジェロミニ フレーム

クロカン車に求められる堅牢性で言えば、モノコックボディにラダーフレームを入れ込んだ“ビルトインラダーフレーム”を採用。かなり本格的な悪路走行を可能にしながらも、舗装路でのタウンユースも犠牲にしない贅沢な作りとなっていた。

イマの流行に乗れば新型パジェロミニも売れる…かも!?

2代目パジェロミニ プレミアムセレクション FA11型

昨今、売れているのは、ミニバン、SUV、軽自動車というジャンルであることを考えると、新型ジムニーが大ヒットしているのも合点がいく。となれば、パジェロミニの復活を待ち望んでいるユーザーも少なくないはずだ。

SUVブーム、軽自動車ブーム、そしてジムニーの大ヒットを見れば、兄貴分であるパジェロが撤退してしまったこのタイミングは、話題性という要素も加わって十分に勝機があるかもしれない。

一部では、日産 デイズや三菱 ekワゴンのプラットフォームをベースにした、新型パジェロミニのうわさが出始めているのも事実だ。

では、このブームに乗って、新型パジェロミニが復活するのかと言うと、筆者の個人的な見解としてはいささか疑問が残る。

三菱 新型eKクロス ボディカラー:ナチュラルアイボリーメタリック/サンシャインオレンジメタリック

そう考えざるを得ない理由としてあげられる点はいくつかあるのだが、まず言えることがekクロスの存在だ。

ekクロスは、新型デリカD:5譲りのダイナミックシールドを採用した大胆なフェイスデザインだけでなく、三菱の本気がうかがえる作りこみで、各方面から高い評価を受けている。

今もし新型パジェロミニが、ekワゴンのプラットフォームをベースに復活したとすると、キャラクターとしては非常に住み分けが難しく、せっかく評価の高いekクロスの需要を喰ってしまう恐れがあるのだ。

スズキ 新型ジムニー XC(5MT) ボディカラー:キネティックイエロー
スズキ 新型ジムニー XC(5MT) ボディカラー:ミディアムグレー

そして、もう一つの懸念点は、ジムニーがなぜここまでの人気を獲得したのかという点にある。

ジムニーがヒットした理由は、昨今の流行に後押しされたことだけではない。ジムニーには永年の歴史で培ってきた“軽自動車でも本格クロスカントリー四駆”というブランド力と、それを実証する唯一無二の走行性能があるからだ。

つまり、あくまで乗用車であるekワゴンのプラットフォームをベースに作ったとしても、ジムニーのような“本格派”というイメージを持たれ難い。また、いくらジムニーが人気とは言え、乗用車タイプの軽自動車ほどの販売台数は望めない。

そうなると、今の三菱に高い開発費をかけて、かつてのパジェロミニと同等の本格的な装備を持った新型を開発するだけの体力はないだろうし、そんな大博打を打つことも難しいだろう。

名門4WDメーカーとしてパジェロミニの復活はカギになる

三菱 パジェロ ファイナルエディション

三菱はパジェロの存在によって、4WD車の名門メーカーという地位を獲得し、最盛期には国内4位のメーカーにまで成長した。

そんな三菱の一時代を築いたパジェロが撤退したことは、特別な三菱ファンではない方でも、一抹のさみしさを感じるのではないだろうか。

2代目パジェロミニMC2008~

今回取り上げたパジェロミニも、4WDの三菱というブランドをよく表現していたモデルだけに、もし開発費を掛けることができるのなら、新型パジェロミニをぜひ復活させてもらいたいと思うのは筆者だけではないはずだ。

[筆者:増田 真吾]

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