創刊130年

 袋に入った物を手でこねて、丸い形にする。「專(せん)」という字は、その丸めた物を表すという。誰かがそれをしょっている。「伝」の旧字体「傳」は、「人」が「專」を背負い、運ぶことを言い、そこから「運び、伝える」の意味になったと「常用字解」(平凡社)にある▲新聞を作るわれわれが届け、伝えるべきことは何か。十分に手でこねて、届けられているか。読んでくださる方々に感謝の気持ちをささげながら、あらためて胸に問う日でもある。長崎新聞はきょう、創刊130年を迎えた▲身近な話題、役立つ情報をできる限り届けること。私たちはどんな社会を生きているのか明らかにすること。喜怒哀楽を皆さまと共にすること。背中の袋がずしんとくる▲お届けしたものは、できれば心のどこかに残りますよう。そう願う身に、きょうの別刷りの「第2部」にある「長崎新聞とわたし130の話」はほの温かい▲その一つにある。西彼時津町の女性の息子さんが小学1年だった頃、投稿された詩を大村市の方が「声」欄で素敵だと書き、うれしくてお礼の手紙を書いた。本紙を通じた交流が長く長く続いたという▲読んでもらう方々と届けるわれわれがつながる。誰かと誰かがつながる。そうありたい、そうあってほしいと願いながら「傳」の1字をじっと見る。(徹)

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