がんと闘い百名山制覇 65歳島田さん(富山)意欲衰えず

光岳に登頂した島田さん

■「さらに登りたい」

 富山市高畠町の島田正雄さん(65)は下咽頭がんを患いながらも登山を続け、日本百名山を制覇した。闘病中に諦めかけた時期もあったが、8月下旬に最後の山の頂上に立った。「やった」と笑顔がはじけた。(報道センター・小林光里)

 島田さんは県職員だった1998年ごろ、上司が日本百名山の制覇を目指していたことに影響を受け、自身も目指すようになった。自分の力だけで登る達成感を感じてのめり込み、20年ほど続けてきた。

 病が襲ったのは、97カ所を登り、達成目前だった昨年2月。喉に違和感があり病院で検査を受けた結果、下咽頭がんのステージ4と分かった。手術で声帯を摘出し、補助器具「電動式人工喉頭」を喉に当てながら会話する生活が始まった。「お先真っ暗だった」と振り返る。

 登山は一時断念したが、時間がたつにつれ「病気を理由に目標を諦めるのは嫌だ」という気持ちが芽生えた。ことし4月から比較的標高の低い県内の山を登り、体を慣らし始めた。がんの影響で体重は10キロ落ち、荷物が重く感じたり歩く速度が遅くなったりした。

 しかし意欲は衰えず、7月に百名山のうちの2カ所を登頂。8月21日、最後となった静岡と長野の県境にある光岳(2592メートル)を登り切った。島田さんは「今まで登った中で、思い出深い山にもう一度登りたい」と次の目標を掲げている。

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