【U-18W杯】守備のミスと“貧打”に「泣き続けた」日本、勝利のために必要だったことは…

U18W杯で5位に終わった侍ジャパンのメンバーたち【写真:荒川祐史】

4大会ぶりの表彰台を逃す5位「最後も自滅で終わってしまった」

■オーストラリア 4-1 日本(7日・機張)

 韓国・機張(きじゃん)で開催されている「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(全試合テレビ朝日系列・BS朝日・AbemaTVで放送)は7日、スーパーラウンドの最終戦が行われ、野球日本代表「侍ジャパン」はオーストラリアに1-4で敗れた。決勝進出だけでなく、3位決定戦進出の可能性も消滅。大会を通じて課題となっていた守備のミスから失点を喫し、2012年(6位)以来4大会ぶりに表彰台を逃す5位に終わった。

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は「ミスに泣かされ続けた大会。最後も自滅で終わってしまいました」と総括。日本チームの精神面での課題を指摘し、3安打1得点に終わった打撃については「チームとしてどう攻略するのかが見えなかった」と分析した。

 初回に石川の一ゴロの間に先制点を奪った日本だが、2回に先発・浅田が三塁内野安打を許すと、右前打で無死一、三塁とされ、マクドナルドに中前適時打を浴びる。その後、バザーナの左前適時打で2失点目を喫し、なおも無死満塁で前がマウンドへ。続く打者を三ゴロに打ち取ったが、石川が後逸して2者が生還。一挙4失点を喫した後は投手陣が踏ん張ったものの、打線が反撃できずに敗れた。

 この試合、記録上では日本の失策は「1」だった。だが、2回の三塁内野安打は石川からの送球が逸れたもので、マクドナルドの中前適時打も遊撃の武岡が捕球できずに抜けたもの。野口氏は「ミスに泣かされ続けた大会でした。記録はヒットでしたが、エラーのようなもの。石川の送球もそうですし、武岡が捕球できなかった当たりもそうです。ピッチャーが打ち取ったものはしっかりアウトにしないと」と厳しく指摘した。

「投手陣がボコボコにやられた試合はなかっただけに、打つ方と内野手のミスが悔やまれます。打つか打たないかは相手もあることだから結果ですし、ある程度は仕方ない部分はありますが、ミスは防げる。大会を通じて、エラーはほとんどが送球ミス。防げるものだったと思います。ああいうミスは連鎖することもあるので、ミスがミスを呼んでしまったのかもしれません。

 原因はやはりメンタルの部分が大きいと思います。もちろん、やったことのない球場、環境というのもあると思いますが、普段はチームでエラーをしないような選手たちがエラーをしてしまうのですから。ジャパンのユニホームを着ている重圧もあるでしょうが、これを重圧と思うのか、そう思わないのかは大きい。韓国戦の後半からオーストラリア戦にかけては、特にそういう怖さを感じました。記録はヒットでも、実際はエラーと言えるプレーでしたから。ミスが多くなっていたことで、気持ちが後ろ向きになって守っていたのかもしれません」

「選手たちの『負けているからとにかく打たなきゃ』という状態がずっと続いてしまった」

 守備のミスと同じように“貧打”も大会を通じて課題となり続けた。この日は相手の先発右腕ビドワに7回3安打に抑え込まれ、反撃することができなかった。「リードされて焦ってしまい、慌てて打ってしまっていた。ボール球を振っていました」。野口氏はここにもメンタル面の影響が出ていたと見ている。

 さらに「高めの真っ直ぐは、審判がストライクと言っても打たないほうがよかった。オーストラリアの先発投手の球は打ちにくい感じでいい具合に荒れていて、さらにこの試合は高めのストライクを取る球審でした。この2つがちょうど合ってしまっていて、日本の打撃陣には不利な状況でありましたが、手を出しても、球が強いからファウルでカウントを稼がれて、前に飛べばポップフライになっていました」と分析。攻略のためにチームとして意思統一ができていたのかが重要だという。

「打ちにくいなら、追い込まれるまでは高めは我慢するとか、追い込まれたら何とかファウルにするとか、そういうことを指示した人がいたかどうか、ですね。選手たちの『負けているからとにかく打たなきゃ』という状態がずっと続いてしまった。ピッチャーをどう攻略するかというチームの方針が、見ている限りは伝わってきませんでした。それを言ってあげられる指導者がいたのか。日本のトップクラスの選手たちとはいえ、やっているのは高校生ですから。どうしても勝たなくてはいけない試合で硬くなってしまっていたので、1つの指示は大事だったと思います」

 守備と打撃で苦しんだ今大会の日本。ただ、当然ながらいいところもあった。日本の強みである投手力の高さを存分に示した大会でもあった。

「前評判のいいピッチャーたちが、実力通りのものを見せてくれました。ピッチャー陣の頑張りはすごく大きった。韓国戦で1イニングで降板した佐々木も残念でしたが、マメならば仕方ありません。次のステージで投げるときに同じことにならないように改善していってもらえれば。ミスでの失点はありましたが、ピッチング自体が駄目だった投手はいませんでした。期待を抱かせるピッチャー陣でしたよね。特に、奥川、西、飯塚、宮城の4人は評価をさらに上げたのではないでしょうか」

 当然、大学や社会人に進む選手もいるが、プロの評価を上げた投手もいたと野口氏は言う。10月にはドラフトが控える。どの選手が、どんな順位で、どの球団から指名を受けることになるのだろうか。世界を経験して大きくなった選手たちの次のステージでの活躍に期待がかかる。(Full-Count編集部)

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