窓口対応や通知文書、やさしい日本語に統一 外国人市民向けに新指針 綾瀬市

やさしい日本語を使用した綾瀬市の封筒のサンプル(市提供)

 「言葉の壁」による情報格差を少しでも解消しようと、神奈川県綾瀬市は「外国人市民への情報提供ガイドライン」を策定し、8月から運用している。「やさしい日本語」を基本に窓口対応や通知文書、市有施設のサインで使用を統一する。県内自治体では横浜、川崎の政令市以外では初の策定という。

 市によると、市内の外国人市民は6月1日現在、ベトナム、ブラジル、スリランカなど49の国・地域出身の3868人。人口に占める比率は4.53%で県内19市で最も高く、多文化共生社会への対応が急務になっている。

 そこで市内に定住する外国人市民に対する有効な情報提供の在り方を探るため、昨年9~10月に実態調査を初めて実施。日本語での会話のほか、読解が簡単な表現やひらがなを含めれば8割程度の人が理解できることが判明した。

 市は、こうした調査結果を踏まえて同ガイドラインを策定。外国人市民の母国語は22に上り、翻訳作業は限界があるとして、簡易な表現や漢字にふりがなを振るやさしい日本語の普及を図るとした。

 例えば「危険」を「あぶない」、「避難」を「逃げる」に書き換える。カタカナ語や外来語はできる限り使用せず、「めちゃめちゃ」「ガタガタ」などの擬態語や擬音語はほとんど伝わらないので使わない。また、庁内の窓口対応では、会話の途中で「分かりますか」と確認することなどを担当職員に求めた。

 対象は印刷物や電子媒体のほか、市有施設のサイン表示でも、ひらがな及び英語を併記する。ただ、災害や医療など重要な行政情報に関しては、従来から取り組んでいる多言語翻訳も併用するという。

 市は9月に職員向けにガイドラインの説明会を実施。やさしい日本語を習得するための研修も2020年度開催する。

 ◆やさしい日本語 1995年の阪神大震災で外国人の死傷割合が日本人に比べて2倍を超えたことなどを教訓に、弘前大学の研究者が考案した。主に災害情報を外国人に迅速かつ正確に伝えるため、難解な語彙(ごい)を言い換えたり、文の構造を簡単にしたりするなどの作成ガイドラインなどが公開されている。自治体やボランティア団体、マスコミ関係者らの活用が想定され、情報提供の現場などでも導入が始まっている。

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