[世界のリーグ売上ランキング]1兆円超え達成の2リーグはどこ? 日本と桁違いの売上額

日本のスポーツ産業は欧米に比べて後れを取っているといわれて久しい。しかし近年では、日本の2大プロスポーツリーグであるプロ野球、Jリーグは共に右肩上がりの成長を遂げているのもまた事実だ。果たして世界のプロスポーツリーグは、いったいどれだけの収益をあげているのだろうか?

(文=池田敏明、写真=Getty Images)

大幅な収益アップとなっているJリーグ

イギリスの『パフォーム・グループ』と2017年から10年間2100億円という巨額の独占放映権契約を結んだことにより、Jリーグの営業収益は大幅に改善されている。
中でもJ1リーグは、放映権契約料を元手にリーグ側から分配される「Jリーグ配分金」の額が大幅にアップ。
2016年までは18チームの総額が40億4200万円だったのに対し、2017年は85億3300万円と、45億円近く上昇している。全体の営業収益も、2016年の655億2200万円から2017年は734億7900万円と80億円近く増加した。

アンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸)やフェルナンド・トーレス(サガン鳥栖)といったビッグネーム加入に沸いた2018シーズンの営業収益は、現時点で発表されている15クラブ(柏、湘南、磐田を除く)で747億2400万円とさらに増加するのが確実だが、世界各国のスポーツリーグの営業収益を見ると「上には上がいる」ことを痛感させられる。近年の数値を比較してみよう。

圧倒的なアメリカ4大スポーツと、急成長のMLS

スポーツが一大産業となっているアメリカでは、「北米4大プロスポーツリーグ」の中でも圧倒的な人気を誇るナショナルフットボールリーグ(NFL)が、2017年に140億ドルという驚異的な営業収益をあげた。
日本円にすると約1兆5540億円というとんでもない数字である。NFLはレギュラーシーズンとスーパーボウル(優勝決定戦)の放映権を一括管理している。
アメリカのテレビ視聴率はスーパーボウルが断トツの1位、トップ10の大半をNFLレギュラーシーズンの試合が占めるというのが毎年の定番となっており、歴代視聴率を見ても、トップ20のうち19番組がスーパーボウルの中継となっている。
それだけの超優良コンテンツであるだけに、放映権も複数の放送局の総額として年間70億ドル(約7770億円)もの大金がNFL側に支払われているという。
他にもスポンサー収入やチケット収入、グッズ売上のロイヤリティーなどがNFLの収入源となっている。

メジャーリーグベースボール(MLB)も100億ドルを超える営業収益をあげている。MLBは16年連続で増益となっており、2017年の時点で100億ドルを突破。2018年は103億ドル(1兆1433億円)の収益をあげた。
日本プロ野球(NPB)は2017年が約1800億円となっており、6倍以上の差をつけている。
1試合あたりの観客動員数はNPBがMLBを上回っているので、球団数の差(MLB:30チーム、NPB:12チーム)があるとはいえ、チケット収入でここまで差がついているわけではない。
MLBもNFL同様、放映権料やスポンサー契約料で多くの収入を得ている。

ナショナル・バスケットボール・アソシエーション(NBA)は74億ドル(約8214億円)、ナショナルホッケーリーグ(NHL)は44億3000万ドル(約4917億3000万)と、北米4大プロスポーツリーグはいずれも数十億ドル規模の営業収益を得ている。

また、急成長を遂げているメジャーリーグ・サッカー(MLS)は6億4400万ドル(約714億8400万円)と、まだまだ4大リーグには遠く及ばない数字となっている。
とはいえ、欧州サッカーリーグと比較すれば、5大リーグ(プレミアリーグ、ブンデスリーガ、ラ・リーガ、セリエA、リーグ・アン)に次ぐ収益を誇り、ロシア・プレミアリーグやトルコ・スーパーリーグを凌ぐにまで成長しているのだ。
MLSは1996年に10クラブでスタートしたが、2005年からはエクスパンション(クラブ数の増加)を進めており、2019シーズンは24クラブが参加している。
2020年に2クラブ、2021年に1クラブの追加がすでに決まっており、新規参入クラブは1億5000万ドル(約165億円)のエクスパンション・フィーをMLBに支払わなければならず、これが収益の柱の一つになっている。
また、最近の調査では人気面でNHLを上回っており、どこまで成長していくか楽しみだ。

欧州サッカーで圧倒的なプレミアリーグ CLも1試合当たりでは莫大

欧州サッカー界に目を転じると、プレミアリーグが54億4000万ユーロ(約6745億5600円)と断トツの営業収益を誇っている。
アジア圏をはじめ世界各国で人気が高く、アメリカのプロスポーツリーグと同様、放映権料やスポンサー契約料で多額の収入を得ている。
ブンデスリーガやラ・リーガ、セリエAは、プレミアリーグと比較すると2分の1前後の営業収益となっているが、それでも20億から30億ユーロ前後の収益をあげており、Jリーグとは大きな差がある。

ラ・リーガに関しては2010年代初頭、スペイン国内の不況の影響もあって経済破綻寸前まで追い込まれていたが、2013年にスペインプロリーグ機構の会長に就任したハビエル・テバス氏の下で改革に乗り出し、一気に赤字を解消した。
テバス会長は各クラブが独自に契約していた放映権を一括管理し、各クラブに十分な額を分配できるように変更。また、試合時間の多様化によってアジア諸国で視聴しやすくなり、放映権販売の交渉がしやすくなったことも、収益アップの一因となった。
以前は深夜にしかラ・リーガの試合を視聴できなかったのが、数年前からプライムタイムでも楽しめるようになったのは、そういった事情によるものだ。

各クラブが高額の放映権収入を得られることで知られるUEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL)の年間営業収益は21億796万ユーロ(約2613億8700万円)。
単純な金額ではプレミアリーグやブンデスリーガ、ラ・リーガ、セリエAを下回っているが、そもそもの試合数が各国リーグ(プレミア、ラ・リーガ、セリエA:380試合、ブンデス:306試合)に比べて125試合と少ないため、1試合あたりの収益は各国リーグを大きく上回っていると考えられる。欧州CLは欧州サッカー連盟(UEFA)にとっても、参加するクラブにとっても非常に重要な大会だといえるだろう。

日本のプロスポーツは上述のとおり、NPBが約1800億円、J1が約735億円の営業収益を記録しているが、どちらも毎年、その数字を増やしており、NPBは2000億円、J1は1000億円突破が当面の目標になるだろう。アメリカや欧州に比べて日本のプロスポーツはまだまだビジネス化を進めていく余地があるため、今後、収益が一気に増加する可能性がある。我々が驚くようなビッグディールが成立し、日本のプロスポーツ界がさらに発展していくことを願うばかりだ。

<了>

[主な世界のプロスポーツリーグ売上額]

1. NFL
アメリカンフットボール/アメリカ
1兆5540億円
2. メジャーリーグベースボール(MLB)
野球/アメリカ
1兆1433億円
3. NBA
バスケットボール/アメリカ
8214億円
4. プレミアリーグ
サッカー/イングランド
6745億5600万円
5. NHL
アイスホッケー/アメリカ
4917億3000万円
6. ラ・リーガ
サッカー/スペイン
3928億3200万円
7. ブンデスリーガ
サッカー/ドイツ
3810億5200万円
8. セリエA
サッカー/イタリア
2749億0800万円
9. UEFAチャンピオンズリーグ
サッカー/国際
2613億8700万円
10. フォーミュラ1(F1)
モータースポーツ/国際
2027億9700万円
11. リーグ・アン
サッカー/フランス
2098億0800万円
\---日本プロ野球(NPB)
野球/日本
1800億円
\---J1リーグ
サッカー/日本
734億7900万円
\---メジャーリーグサッカー(MLS)
サッカー/アメリカ
714億8000万

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