【台風15号】長引く停電、断水も 伊勢エビ、マグロ処分

給水車を利用する住民の女性=10日午後5時5分ごろ、鎌倉市玉縄5丁目

 台風15号の通過から一夜明けても続いた停電と真夏並みの暑さは、三浦半島の市民生活を直撃した。各自治体によると、10日午後5時までに、5市町で最大約5万軒が停電。影響で、水の供給に支障が出た地域もあった。

 各自治体によると、同日午後5時までにいずれも最大で、横須賀市で2万5400軒、鎌倉市で1万1200軒、逗子市で1300軒、三浦市で6800軒、葉山町で4600軒が停電した。

 鎌倉市は同日、市役所本庁舎や四つの行政センター、川喜多映画記念館など7カ所を市民の休憩場所として開放した。

 幅約30メートルにわたって土砂崩れが起き、電柱もなぎ倒された栄光坂(同市玉縄)近くのセンターには、地域住民らが集まった。澤渡千恵子さん(65)は午後、愛犬とともに身を寄せた。「停電でクーラーが使えず、暑くて家にいられなかった。犬もかわいそうで。電気のありがたみが分かった」とひと息ついていた。

 横須賀市汐入5丁目の住宅街では、強風で民家の屋根に倒れた木が電線に絡まり、周辺の約30世帯が9日朝から停電した。

 新井住子さん(83)は9日未明、大きな物音で目が覚めた。業者が倒木の一部を切断して道路は通行できるようになったが、まだ電線に木が絡まった状態で、「通勤や通学の時に、木が落ちてこないかしら…」と不安げに見上げた。近くの酒井宣昭さん(80)は「この辺りはお年寄りが多く、熱中症が心配。早く復旧してほしい」と話した。

 三浦市内では、城ケ島や小網代地区で停電が長引いた。

 城ケ島漁協直販所では、食堂で提供する魚介類を蓄養するために水槽に海水をくみ上げるポンプが停止し、伊勢エビ20~30キロを処分することに。食堂店主の青木悟さん(60)は「東日本大震災とは違い、今回はすぐに復旧するだろうと思い、対応が遅れた」と説明。「これから冷蔵庫や冷凍庫の中身を確認するが、不安」と話した。別の食堂でも、冷蔵庫に入れていた2日分のマグロ約15キロを処分。店主は「これほど長い停電は初めて。道路も冠水し、大変だった」と嘆いた。

 葉山町も10日、避難所を2カ所開設。利用者は携帯電話の充電をしたり、食事を取ったりしていた。

 同町の長柄地区では約2千軒が停電。地区内のマンションでは断水も起きた。住民の女性(68)は「携帯の充電も切れたし、シャワーも浴びたい」と重なる災難に困り果てた様子だった。

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