【台風15号】長引く余波 停電、エアコン使えず救急搬送

土砂崩れや倒木で停電が続いている鎌倉市二階堂=10日午後6時25分ごろ

 台風15号に伴う停電は10日も、三浦半島を中心に続いた。土砂崩れや倒木が起きた鎌倉市二階堂では復旧作業のため、県が陸上自衛隊に災害派遣を要請。その他の自治体もエアコンが稼働する施設を一般開放するなど、長引く台風の余波の対応に追われた。(横須賀支社)=関連記事1面に

 三浦半島の5市町では10日午後5時までに、最大約5万軒が停電した。

 鎌倉市二階堂では、土砂崩れや倒木の影響で9日未明から停電し、10日午後9時現在で約1200軒。災害派遣要請を受けた陸上自衛隊は同日夕、現場を視察した。今後、県と協議した上で、数日かけて土砂や倒木を撤去する予定。

 近くに住む中村冬夫さん(71)は隊員から作業工程の説明を受けた。土砂で自宅周辺の道路が寸断され、近くに住む長男(45)が脚立をはしご代わりに崖下から掛けるまで孤立状態だったといい、「どうなることかと思っていたが、自衛隊が来てくれると聞いて本当にほっとした」と安堵(あんど)の表情を見せた。市と町内会が用意した発電機を近隣住民で共有しているという。

 停電が原因で救急搬送されたケースもあった。逗子市では9日夕、50代女性がエアコンがつかず、嘔吐(おうと)していると息子から通報があり、熱中症と診断された。葉山町では10日、四肢まひの70代の男性がたんの吸引器が使えずに息苦しくなり、入院した。

 長引く停電と酷暑を考慮し、各自治体も施設を開放して住民を避難させた。

 横須賀市は、原則60歳以上の市民が対象の老人福祉センター6カ所を、初めて全市民に開放。鎌倉市や逗子市、葉山町も市役所本庁舎や行政センターなどの施設を開放したり、避難所を開設したりした。

 商業施設の営業にも影響が出ている。横須賀美術館(同市鴨居)は9日から閉館。電力が復旧したため、11日からの開館を目指す。近くの観音崎京急ホテル(同市走水)も休業し、再開は12日になる見込みという。

◆横須賀線が全線再開

 台風15号の影響で、逗子-久里浜間で運転を見合わせていたJR横須賀線は10日午後4時ごろ、全線で運転を再開した。

 JR東日本横浜支社によると、強風で断線した送電線の復旧作業が難航し、同日午前11時ごろを見込んでいた再開が大幅にずれ込んだ。同日だけで1万5千人に影響した。

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