川崎駅東口、憩いの場に 市が14日から社会実験

トレーラーハウス内に用意された本は自由に読書可能だ

 川崎市は、JR川崎駅東口の魅力向上に向けた社会実験に乗り出す。14日から約1カ月間、トレーラーハウスを利用した図書スペースや、誰でも自由に弾ける「ストリートピアノ」を東口駅前広場に設置し、週末にはキッチンカーも配備する。広告規制を緩和した東口駅前広場に広告塔を配置する実証実験の一環で、市は憩いの場としてのにぎわい創出と、広告の訴求力アップの相乗効果を狙う。

◆ピアノや図書スペース設置

 トレーラーハウスには小説など100~500冊の書籍を用意。ハウス外でも自由に読書が可能で、気に入った一冊があれば持参した本と交換して持ち帰ることができる。市民ボランティアによる読み聞かせも予定し、子連れでも立ち寄りやすい空間を目指す。

 さらに、市教育文化会館で約半世紀にわたって親しまれたピアノをストリートピアノとして再生。期間中にはコーヒーやハーブティーも振る舞われ、「音楽のまち」の雰囲気を楽しみながら、ゆったりと過ごせる時間を提供する。

 社会実験の背景には、近年抱える課題がある。市拠点整備推進室によると、2011年に供用開始した東口駅前広場は、年数の経過とともにゴミの散乱や落書き、放置自転車が増加。客引きや路上販売といった風紀の乱れも目立ち、市民からは駅前環境の改善を求める声が多く寄せられているという。

 こうした現状を受け、市は昨年12月、市条例を一部改正し広告規制を緩和。屋外広告の禁止地域だった同駅周辺でも表示可能とし、駅周辺の環境整備を推進する財源としたい考えだ。

 今月からは東口駅前広場に順次10基の広告塔を設置し、来年2月まで試行。将来的には広告収入の一部を活用し、啓発パトロールなどの環境美化やインフラ整備への還元を図っていくという。

 今回の図書スペースやストリートピアノの設置は、広告塔の実証実験に併せた企画。市内外から人を呼び込んで滞留させることでエリアの広告価値を高め、さらなる好循環を生み出す目的がある。

 「カワサキデイタイム・ナイトタイム」と称し、昼夜さまざまな時間帯の利用実態を調査。ターミナル駅に集った人や周辺で働く人のニーズを探り、親しみやすい公共空間の創出につなげていく。

 期間は10月6日までで、午前11時~午後9時の間、商業施設「川崎ルフロン」に面した東口駅前広場の一部を活用する。周辺では随時イベントも展開していく方針で、市拠点整備推進室の担当者は「公共空間の開放は近年トレンドにもなっている。コミュニティーをつくりながら効果を検証していきたい」と話している。

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