<隠れた名盤> Retrospective『Reconstructions -Japanese Anime Song Remakes-』 チェロとピアノで、アニソンを斬新に再構成

Retrospective『Reconstructions -Japanese Anime Song Remakes-』

 チェリストの河内ユイコと作曲家でありピアニストの後藤望友という女性デュオの初アルバム。単なるアニメソングのカバー集ではなく、斬新に各楽曲が“再構築”されている。

 例えば、1曲目の『鉄腕アトム』では、闇の中にてある物体に生命が宿り、光に向かって駆け出すような独自のメロディーの後、お馴染みの♪空をこえて~の部分でチェロの音色が高らかに響き、ピアノがアトムのお茶目な部分を演出する。また、『めざせポケモンマスター』は、タンゴ風にアレンジされ、こちらは貴族たちのドタバタ劇に様変わりするようだ。どの曲も、緻密に計算された曲想と、即興性の高い大胆な演奏に息をのむ。

 とりわけそれが分かるのが『キューティーハニー』だろうか。時にチェロとピアノが競い合うように演奏し、時に互いを補い合うように演奏する様子は、孤独で闘いつつも、実は誰かによって支えられているという日常をも映し出す。もし、彼女たちがサントラを手がけたアニメやドラマがあれば、大きな話題を呼ぶことだろう。

 アニソン系の9曲とは別に、ボーナスとしてラヴェルの『Bolero』を収録。例の優雅なメロディーも、二人にかかれば摩訶不思議な雰囲気となり、我々聴き手は迷宮に誘われるようだ。本作を聴けば、何かを徹底的に極めれば、ユニークな発想にたどり着くことを実感するはず。

(ポリスター・2500円+税)=臼井孝

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