鉄道旅行賞の審査員のギャラは何と!

【連載】鉄道なにコレ!?(第2回)

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大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)

共同通信ワシントン支局次長

大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)

共同通信ワシントン支局次長

1973年東京都生まれ。97年に入社し、松山支局、本社経済部、ニューヨーク支局、経済部次長などを経て2020年12月から現職。運輸と旅行、国際経済の分野を長く取材。日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」の審査員を務めている。

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「鉄旅オブザイヤー」2018年度の授賞式での受賞者と関係者=2019年2月6日、さいたま市の鉄道博物館

 優れた鉄道旅行を選ぶ「鉄旅(てつたび)オブザイヤー」を主催する鉄旅オブザイヤー実行委員会は8月30日、一般の方や団体から「夢の鉄道旅行」のアイデアを募る一般部門の募集を始めた。最高賞の「ベストアマチュア賞」1点には賞金5万円とJR協賛による記念品が贈られる予定だ。最終審査に当たるのは13人・団体の外部審査員で、そうそうたるメンバーの中で誠に僭越ながら私も一員だ。知人から「審査員のギャラは弾むの?」という質問を受けた。その真相は…。(共同通信社福岡支社編集部次長 大塚 圭一郎)

 ▽「鉄道旅行のアカデミー賞」

 鉄旅オブザイヤーは東日本大震災で旅行需要が落ち込んだ2011年度に始まってから毎年実施され、授賞式が鉄道博物館(さいたま市)で毎年2月に開かれてきた。当初から選んでいる旅行会社部門は、その年度の10月までに旅行会社が催行を決めた国内の鉄道旅行を対象とし、最高賞の「グランプリ」や2位の「準グランプリ」などを選出。さらに16年度から一般部門も加わり、9回目となる19年度は鉄道博物館で20年2月5日に発表される。

 旅行業界でつくる鉄旅オブザイヤー実行委員会が主催し、17、18両年度の授賞式には実行委員長の高橋広行JTB社長が駆け付けた。後援にはJR北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州のJR旅客6社全てと、私鉄でつくる日本民営鉄道協会、日本旅行業協会といった鉄道・旅行業界の主要メンバーが名前を連ねるオールスター戦の様相だ。

 鉄旅オブザイヤーを受賞した旅行商品をニュース番組で取り上げたテレビ局の方から「鉄旅オブザイヤーはこんな賞、と例えるキャッチフレーズはありますか」と尋ねられた時のことだ。私は日本の映画賞になぞらえて「『鉄道旅行の日本アカデミー賞』でしょうか」と答えた。すると、その方は「それはいいですね。頂きました!」と合点し、放送された番組の画面に映し出されたキャッチフレーズは…。

 「鉄道旅行のアカデミー賞」だった。私は国内旅行を対象にした賞なので「日本アカデミー賞」になぞらえたのだが、一気に本家の「アカデミー賞」に昇華するとは大出世を遂げたものだ。以来、私は歩調をそろえて「鉄道旅行のアカデミー賞」と呼ぶようにしている(笑)。

 ▽受け取ったギャラは…

 「アカデミー賞」にたとえて盛り上げたところで、「審査員のギャラは?」という疑問にお答えしたい。私は勤務先の共同通信社の許可を取って13年度に審査員となり、19年度に7年目を迎える。毎年、実行委員会による1次審査で勝ち残った最終候補に関して100枚を超える資料を読み込み、企画力や独創性、乗車する列車や路線の魅力度などの項目を評価して旅行会社部門は60点満点、一般部門は50点満点でそれぞれ採点してきた。

鉄旅オブザイヤー18年度の授賞式で紹介された筆者のコメント=19年2月6日、さいたま市の鉄道博物館

 かなりの労力を投じているが、答えを言うと「報酬は全くのゼロで、無報酬のボランティア」なのだ。従来は授賞式が午前11時に始まっていたため、授賞式後は鉄道博物館に残って館内をタダで観覧できることと、昼食に特製弁当を頂けるのが“二つの役得”だった。しかし、私は審査員となって最初の3年間は米国ニューヨーク支局に駐在していたため、それらの役得も棒に振っていた…。

 18年度からは式典運営を効率化するため、授賞式の開始時間が午後3時に変更。弁当の支給がなくなった上、式典が終わった頃には閉館時刻を迎えるため、残念ながら“二つの役得”も幕を閉じた。ただし、ノーギャラ、ノー弁当で、式典に直行して終了後はそのまま帰路に就くのは、潔いボランティアの姿ではないだろうか。

 昨年夏に山口県・周防大島で行方不明となっていた2歳男児を見つけだし、今年夏には九州北部を襲った記録的大雨の被害を受けた佐賀県武雄市の家屋復旧を手助けしたスーパーボランティアの尾畠春夫さんには遠く及ばないが、もしかすると一歩だけ、いや車輪1回転分だけ近づけたかもしれない(笑)。

 【鉄旅オブザイヤー】2018年度の旅行会社部門に16社から計104点の応募があり、「グランプリ」には11年7月の福島・新潟豪雨で一部区間が不通となっているJR東日本只見線でトロッコ列車での結婚式に参列して盛り上げる旅行商品、「準グランプリ」には東日本大震災の大きな被害を受けた東北地方で観光列車から復興への応援に感謝する花火を観賞するツアーがそれぞれ選ばれた。一般部門には18年度は72点の応募があり、「ベストアマチュア賞」には熊本地震で被災した熊本県を訪れて一部区間の不通が続く南阿蘇鉄道のトロッコ列車に乗り、復興を応援する専門学校生の企画を選んだ。

 19年度の一般部門で募集するのは、JR旅客6社と地元自治体が開催する大型観光企画「デスティネーションキャンペーン」(DC)が20年度に開催される群馬県(開催期間は20年4~6月)、広島県と周辺地域の山口県岩国市・愛媛県今治、松山両市、岡山県倉敷市など(同20年10~12月)、京都市(同21年1~3月)のいずれかを訪問する鉄道旅行ツアー企画。1泊2日以上のプランを提案する場合、宿泊地域も記入する。鉄旅オブザイヤーのホームページ(https://www.tetsutabi-award.net/)の「一般部門応募要項」にある「応募用フォーム」から応募する。

「鉄道ナニこれ!?」とは:鉄道と旅行が好きで、鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」の執筆者でもある筆者が、鉄道に関して「なにコレ!?」と驚いた体験や、意外に思われそうな話題をご紹介する連載。2019年8月に始まりました。更新時期は不定期ですが、月に1回のペースを目指します。ぜひご愛読ください!

東京・日比谷公園で開催された鉄道イベント「鉄道フェスティバル2018」に鉄旅オブザイヤーのブース前。左から事務局の鹿取さん、筆者と「子鉄」の息子=18年10月