宰相の手さばきを

 宰相の「宰」という字には「つかさどる」「治める」の意味があるが、字義をたどれば「肉を切って料理する」ことらしい。うかんむり(宀)は家を表し、「辛」は包丁を表す、と辞書にある▲宰相とは国を動かすのに腕を振るう、さしずめ料理長だろう。安倍晋三首相はきのうの内閣改造で、政権の骨格は変えずに持ち味を生かす「安定」と、新味を加えた「挑戦」を、ともども示したと胸を張った▲第2次安倍内閣の発足から6年を超えた。その間ずっと、麻生太郎財務相らを脇に置き、これからも続投させる。自民党幹部もその座にとどめた▲そうした基盤の「安定」もあれば、13人を初入閣させる「挑戦」もした、ということらしい。38歳の小泉進次郎氏を環境相に据えたのは「サプライズ」とされるが、人気も話題性もある人の起用は、政権のイメージアップに「もってこい」にも見える▲長崎4区選出の自民党衆院議員、北村誠吾氏は地方創生兼規制改革担当相に就いた。現在7期目、こちらは満を持しての初入閣だろう。地方議員も長く務め、地方をよく知る閣僚としてとことん汗をかいてほしい▲日本は人口が減り、地方の行方はかすみ、社会全体が縮みつつある。外交上の難問も山とある。料理長の手さばきを、国民という客がますます凝視すべき時だろう。(徹)

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