朝乃山、鶴竜破り初金星 秋場所5日目

鶴竜(左)を攻める朝乃山=両国国技館

 大相撲秋場所5日目は12日、東京・両国国技館であり、西前頭2枚目の朝乃山(25)=富山市呉羽町出身、高砂部屋=が横綱鶴竜(井筒部屋)を寄り切り、幕内通算100勝目を初の金星で飾った。県出身力士の金星は1989年初場所で東前頭3枚目だった琴ケ梅(旧八尾町出身、佐渡ケ嶽部屋、97年引退)が大乃国を破って以来30年ぶり。

 朝乃山は立ち合いで得意の右四つに持ち込んだ。鶴竜の下手投げを耐え、左上手をつかんで力強く踏み込むと、土俵際へ押し込んだ。再び下手投げを打とうとする横綱に対して上手を引きながら体を密着させ、そのまま寄った。

 初めて横綱に挑んだ先場所は白鵬(宮城野部屋)、鶴竜との連戦で、いずれも敗れた。入幕13場所目、横綱戦3戦目にして金星を獲得した。

 3勝2敗と白星を先行させ、6日目の13日は大関豪栄道(境川部屋)と対戦する。

 ■攻めの姿勢貫き殊勲  「自分の相撲を信じてきた」。横綱相手に正々堂々、真っ向勝負を挑んだ朝乃山が右を差し、左上手を取って寄り切ると、国技館には大量の座布団が飛び交った。富山の人間山脈がまた一つ壁を乗り越えた。「金星よりも横綱に自分の相撲で勝てたことが良かった」。充実感を漂わせながら汗を拭った。

 左上手をがっちりつかんで離さなかった。鶴竜が下手投げを打ったと同時に左まわしに手を伸ばす。「無理やりにでも取りにいこうと思った」。そこからは万全の体勢だった。「ここで休んだら横綱の相撲になる」と休まず前へ。土俵際で体をくっつけ力強く押し込んだ。

 場所前に左脚に蜂窩(ほうか)織炎を発症し、39度の熱が出た。稽古不足の懸念もあったが、初日から三役力士に2連勝。「前に出れば痛みはない」と攻め続ける相撲を貫き通し、殊勲の勝利につなげた。同じ高砂一門の八角理事長(元横綱北勝海)も「上手を取ったら自信を持っている。堂々としたものだ」と評価する。

 平幕にのみ与えられる金星を手にしたが、三役昇進を目指す大器は「最初で最後の金星にしたい。そういう風に思っていく」。爽やかにも力強く言い切った。 (社会部・松澤拓也)

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