【田澤純一コラム第11回】“浪人”中は公園で練習も…「しぶといヤツだなと自分で思う」田澤純一が振り返る今季

レッズ・田澤純一【写真:佐藤直子】

カブス契約解除から1か月、レッズと2年のマイナー契約

 レッズ傘下3Aルイビルの田澤純一投手が、2019年シーズンを終えた。昨オフにカブスとマイナー契約を結んだ右腕は、傘下3Aアイオワで19試合(18回)に投げて1勝0敗1セーブ、防御率4.00の成績だったが、7月11日に契約解除。その後、1か月の“浪人”生活を経て、8月11日にレッズとマイナー契約を結んだ。新チームに加入後はアリゾナの球団施設でトレーニングを続けていたが、シーズン終了間際の8月31日に3Aルイビルに急遽昇格。2試合(3回)に投げて1安打1四球無失点で今季を終えた。

 2009年に渡米してから、右肘靱帯再建手術を受けた2010年を除く全シーズンでメジャー登板を経験していたが、今年はメジャーに昇格することなくシーズンを終えた。「もちろん悔しい気持ちはあるけれど、自分の置かれた立場を考えると、最後にレッズと契約してもらえただけでも感謝です」という田澤が、2019年を振り返りながら来季に向ける思いを語ってくれた。

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 Full-Countをご覧の皆さん、田澤純一です。メジャーはペナントレース最終盤を迎えて盛り上がっていますが、マイナーは現地9月2日にレギュラーシーズンを終えました。僕が所属するレッズ傘下3Aのルイビル・バッツはプレーオフに出られなかったので、少し早めにシーズンオフを迎えました。

 アメリカに来てから11年目。今年もまた、今までにない経験を積みました。トミー・ジョン手術を受けた2010年以外は、昨年まで毎年メジャーで登板していましたが、今年はなし。もちろん悔しい気持ちはあるけれど、自分の置かれた立場を考えると、最後にレッズと契約してもらえただけでも感謝です。

 オープン戦で結果を出しても評価されなかったり、球団の事情で長めにキャンプ地に滞在したり、自分が何を求められているのか、正直分からなくなったこともあります。契約解除された後は、何をやれば残れたのか、かなり考え込みました。それでも、やっぱり自分ができるのは、いい球を投げていい結果が出るよう一生懸命に準備すること。周りの評価を含め、それ以外の部分は僕にはコントロールできません。

 契約解除された後は、長く支えてくれるスタッフに手伝ってもらい、ロサンゼルス近郊で練習を続けていました。とはいえ、無所属なので、地元の人に交じりながら普通の公園でキャッチボールです(笑)。トレーニングは滞在したホテルのウエートルームを使っていました。1週間が過ぎ、2週間が過ぎ、3週間が過ぎ、さすがにこれ以上長期になったら、一度日本に戻った方がしっかり練習できるかもしれない……。代理人から連絡を受けたのは、そんなことを考え始めた時でした。

移籍後初の3A登板は“因縁のカード” 「去年クビを言い渡されたのが…」

 8月中旬に契約するのは、ただでさえ簡単なことではありません。今年はメジャーで1試合も投げていないし、試合から離れて1か月近く経とうとしている。そんな僕と今季ばかりか来季も契約してくれたレッズ、そして契約を勝ち取ってくれた代理人には感謝の気持ちでいっぱいです。

 マイナーはメジャーよりもシーズンが短く、8月末から9月初めに終わります。レッズと契約した時点で、シーズンは残り3週間ほど。アリゾナにある球団施設でブルペンに入ったり実戦形式で投げたり、来季に向けた調整がメインで終わるかと思っていました。でも、アリゾナのルーキーリーグで1試合投げたら、まさかの3A昇格の知らせです。正直、3Aで投げられると思っていなかったので、本当にビックリしました。大急ぎで合流した3Aルイビルでは2試合投げさせてもらい、無失点という形で今季を締めくくることができました。

 ルイビルでの初登板は8月31日、敵地トレド戦でした。実は去年、タイガース傘下トレドに所属していた時、クビを言い渡されたのが、敵地でのルイビル戦。何の因果かわかりませんが(笑)、苦い思い出のカードで好投し、自分の中での印象を変えられて良かったです。

 今年のオフはいつもより長めになりますが、来年レッズでメジャー昇格し、チームの役に立てるように、じっくりと準備を進めていこうと思います。僕がやること、できることは変わりませんから。

 2009年にレッドソックスと契約して以来、野球においても人生においても、ここまで本当にいろいろな経験を積ませてもらっています。肘の手術をして、先発もやり、中継ぎもやり、世界一になり、クビになり。しぶといヤツだな、と自分でも思います(笑)。しなくてもいい経験もありましたが、引き出しは確実に増えているはずです。

 今年を終えて思うのは、僕が今でも野球を続けていられるのは、自分の力ではなく、周りでいろいろな人たちが動いて、サポートしてくれるおかげだということ。本当にありがとうございます。応援して下さる皆さんの気持ちに応えるためにも、来年またメジャーのマウンドに上がれるように、オフにしっかりトレーニングを積みます!(田澤純一 / Junichi Tazawa)

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