第72回秋季県高校野球大会第4日は15日、県内4球場で3回戦8試合を行い、8強が決まった。富山工が3―2で桜井との接戦を制し、高岡向陵は4―0で新湊を下した。終盤逆転した魚津工が9―6で新川に勝利し、石動が7―5で富山の反撃を振り切った。富山商を破った高岡南と、富山工、魚津工の3校がシード校を倒した。このほか、未来富山、高岡商、高岡第一が準々決勝に進んだ。勝ち残っている8校は来年の春季県大会でシードされる。第5日は21日、県営富山と高岡西部の2球場で準々決勝4試合を行う。県高野連、北日本新聞社主催。
■富山工1年生粟島決勝打
連日の好投手攻略だ。富山工が前日の砺波工戦に続いて見せた逆転劇の主役は1年生の粟島だった。
1点を追う八回、小川の二塁打と石黒大の適時打で同点とし、なお2死一、三塁で途中出場の粟島が左打席に入った。桜井の投手野村は、大会屈指の速球派左腕。外角への直球で追い込まれた。
「甘い球を狙っていたが、もうバットを出すしかなくなった。最後もアウトコースに来ると思っていた」と粟島。再び厳しいコースに来た外角の速球にうまくバットを合わせ、左翼線に打球を落とした。値千金の決勝打に、試合後もチームメートからの祝福が相次いだ。
粟島は砺波工戦でも好投手の黒田から2点適時打を放っている。作田大志監督は「ラッキーボーイ的な存在だ」と活躍を驚く。ベンチ入り18選手のうち1年生は2人だけ。粟島は「先輩のおかげで楽な気持ちで打席に立てて、実力以上のものが出せている」と好調の要因を話す。
準々決勝で戦う高岡向陵も好投手の宝里を擁しているが、粟島は「次もいいところで打ちたい」。勢いに乗る背番号18が3度目の“エース食い”を狙う。(社会部・石黒航大)
■高岡向陵 完封勝ち エース宝里 投打けん引
高岡向陵は1年生バッテリーが躍動し、強力打線の新湊を零封した。先発の宝里は8回を投げて7三振を奪い、被安打はわずか2。捕手の植野は先制の2点適時二塁打を放ち、チームを勢いづけた。
0-0で迎えた四回裏、先頭の宝里が中越え三塁打で好機をつくった。後続が倒れ、2死一、三塁の場面で打席に立ったのは植野。「好投する宝里を助けたかった」。甘い直球を見逃さず、打球は左翼手の頭上を越えた。
宝里は夏の大会で登板はなかったが、力強い直球と多彩な変化球でエースの座をつかんだ。植野も捕球技術が評価され、正捕手を勝ち取った。「配球は全部任せている」と宝里が笑うと、植野は「どんなコースもきっちり決めてくれる」。互いへの信頼がチームの原動力になっている。
宝里は疲労から八回途中で降板。しかし、九回に無死満塁のピンチを迎えると、志願して再びマウンドに立った。自らを強襲する打球を抜群の反応で併殺に仕留め、相手に得点を許さなかった。
チームは8強入りを決め、あと1勝すれば北信越大会出場が見えてくる。宝里は「絶対に4強入りし、北信越へ行く」と力強く語った。(西部本社・平瀬志保)
■1番朝野が活躍 魚津工 シード校破る
○…魚津工の1番打者の朝野が5打数5安打の活躍で、シード校撃破に貢献した。2点を追う七回は左前打で出塁し生還。同点の八回2死二塁では右前打を放って好機を広げ、続く山口の勝ち越し三塁打につなげた。
2番打者として出場した1、2回戦も好調で、大久保博司監督は「バントさせるのがもったいない」と1番に昇格させた。切り込み隊長の役割を十分に果たした朝野は「出来過ぎです」とはにかんだ。
普段は遊撃手だが、2年生捕手のけがで今大会は1年生ながらマスクをかぶる。「捕手はすごく大変だが、攻守でチームを引っ張りたい」と力強く話した。
■富山 粘り及ばず
○…富山は打線が粘りを見せたが、あと一歩及ばなかった。ラストバッターとなった先発松浦の目には悔し涙があふれた。
1-7と6点のリードを許して迎えた九回裏。安打と四球で4点を追加し追い上げムードだったが、2死一、三塁の場面で松浦が放った打球は二塁手の正面に転がった。
投げては五回に安打と四球で5失点し降板。気持ちを切り替え九回に再びマウンドに戻った。澤田利浩監督は「再登板がチームのやる気を引き出し、九回の猛攻につながった」と、松浦をかばった。
◆21日の試合◆ ◇準々決勝 ▽県営富山(午前10時) 高岡南 ― 未来富山 ▽同(午後1時半) 魚津工 ― 高岡商 ▽高岡西部(午前10時) 富山工 ― 高岡向陵 ▽同(午後1時半) 石 動 ― 高岡第一