“夜の保育園”に密着 家庭の複雑な事情も・・・夜間に子どもを預ける理由は? 長野

この春、長野市に午後6時から翌朝にかけて子どもを預かる「夜間専門の保育園」がオープンしました。様々な事情を抱えた家族と、それに寄り添う夜間保育園の一夜に密着しました。

辺りが暗くなり始めた午後6時。
(登園)「はい、こんにちわ」、「ママのおうちがいい」
この時間に登園してくる親子がいます。長野市早苗町にある「夜の保育園みらいく」です。午後6時から翌朝にかけて子どもを預かる「夜間専門の保育園」です。なぜこの時間に、子どもを預けるのか?
(3歳の息子を預ける保護者)「クリエイター系の仕事なので。昼の保育園にも預けているんですけど、夜の方が(仕事の)集中力が持つというか。そういう時に夜の保育園を使わせていただく」
(登園)「こんにちは。お願いします」
1歳の娘・ひまりちゃんを預けにきた田中麻里さん。先月中旬から園を利用しています。
(田中麻里さん)「居酒屋で働いています。週に2、3日ですね」
田中さんは、娘を預け仕事へ・・・
この夜間専門の保育園がオープンしたのは今年4月。市内の民間企業が設置した企業主導型の保育園で、長野市と小布施町で5つの園を運営する一般社団法人「信州子育てみらいネット」が運営しています。
(信州子育てみらいネット・山岸裕始代表理事)「(知人が)夜、飲食店を経営していて、そこで子育て中の女性も働いて欲しいと。そのために保育園を作りたいということで相談されて。夜、少しでも保育の必要があるというお子さんがいらっしゃるのであれば、こういった保育園があってしかるべきかなと思っている」
午後6時半・・・
(夕食)「ごあいさつどうぞ。いただきます」
この日は、ひまりちゃんを含む0歳から3歳までの5人を受け入れました。
午後7時、夕食が終わったら「お遊び」の時間です。
園のスタッフは、保育士5人、看護師1人、保育補助員と事務員が1人ずつです。常に国の基準以上の職員を配置して対応し、子どもたちが安心して過ごせる雰囲気づくりを心がけています。
(夜の保育園みらいく 責任者・松木恵利子さん)「夜は、子どもにとっては心細い時間になると思うので、ゆったりと安心して過ごせることを心がけている。もう一つの家でありたいと思っているので。ここで規則正しい生活を夜の保育園で作ってあげると。保護者も安心して仕事に迎えるんじゃないか」
午後8時、「お遊び」で楽しんだ後は、順番で「入浴」。そして歯磨きが終われば、「就寝」です。
それぞれの子どもに保育士が付き添います。寝入った後は、5分から10分ごとに1回、子どもたちの呼吸などをチェックします。
午後10時前に全員就寝・・・
その頃、ひまりちゃんの母・麻里さんは、勤務先の飲食店で働いていました。この店は、麻里さんの夫・仁珠さんが店長を務めています。麻里さんは、出産後、育児に専念していましたが、気分転換も必要と感じ、先月中旬から仕事を再開。
週に2、3日働いています。
(夫・仁珠さん)「嫁が働きたいという希望もあった。いいタイミングでみらいくさんができたので助かる。はじめは両親に預けるかとかいろいろ考えたんですけど、それも負担になりますし。それならしっかり預かってくれる保育園の方がよかった」
午前0時半、仕事を終え、ひまりちゃんのお迎えへ。預け始めて半月余り・・・
(田中麻里さん)「『ひまりちゃん食べる順番にこだわりがあるみたいですね』とか言ってくれたり。もう一人育ててくれる人がいるみたいな感じ」
預けたことで気づいたこともありました。
(保育士)「元気に過ごしていましたので。よく食べて、よく寝んねできました」
(田中麻理さん)「ありがとうございました」
一方で、「複雑な事情」を抱えている人もいます。
3歳、1歳、0歳の3人の子どもを預けているこちらの女性は・・・
(3人の子どもを預ける保護者)「婚姻関係はあるんですけど夫と別居中で、夫は県外に住んでいる。子どもが立て続けに手足口病とかになって、2ヵ月くらい働けなくなった時に家賃滞納気味で、(知人に)相談したら『長野に来る?』となって」
先月、長野に引っ越してきて、現在は知人の経営する夜の飲食店で働いています。
(3人の子どもを預ける保護者)「子どもには寂しい思いをさせているなとは思うんですけど、生活がかかっているから。お金に余裕ができてきたら、昼に切り替えたい。夜は子どもと一緒に寝たい。一緒に寝て、朝起きてというのが理想的」
家庭の事情で、夜、子どもを預けなければならない人たちもいます。
その家庭をサポートし、親子にとって「安心できる場所」になることが、園に求められる役割です。
(夜の保育園みらいく 責任者・松木恵利子さん)「いろいろなご事情の家庭がありますので、子育ての相談で一緒に考えるという形で、保護者と一緒に子育てのことや生活のこととかいろいろな悩みや相談に乗っていかれる場所であったらいいなと。夜、子どもを預けることにご理解いただけないこともあるかもしれませんが、夜の保育園は、子どもはもちろんお母さんたちの味方だよ、安心できる場所だよと」
(見送り)「ばいばい。気をつけてね」

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