マライア・キャリー「エモーションズ」のルーツをたどってみたら? 1991年 9月17日 マライア・キャリーのセカンドアルバム「エモーションズ」がリリースされた日

マライア・キャリーは1990年デビューなので、「80年代」という本サイトのコンセプトから少々外れるが、それでも今回のテーマは僕たちの世代こそが語るのに相応しい… と勝手に確信して始めさせてもらいたいと思う。

マライアの2ndアルバム『エモーションズ』のタイトルナンバー「エモーションズ」の出だしの部分を初めて聴いた時、僕たち世代、あるいはちょっと上の世代の音楽ファンであれば、その脳裏に少なくとも2つの懐かしい曲が思い浮かんだ筈だ。

1つはシェリル・リン「ガット・トゥ・ビー・リアル」、もう1つはエモーションズ「ベスト・オブ・マイ・ラブ」である。

シェリル・リンのデビュー曲である「ガット・トゥ・ビー・リアル」は、日本の音楽ファンには DREAMS COME TRUE の「決戦は金曜日」の元ネタの1つとして知られているので、ディスコ歌謡的な印象があるかもしれないが、彼女は歴とした R&B シンガーである。しかもこの曲は、デヴィッド・ペイチ(TOTO)とデイヴィッド・フォスター(エアプレイ)の2人がプロデュースしている。

そして、エモーションズの最大のヒット曲である「ベスト・オブ・マイ・ラブ」は初期ディスコブームを代表する曲。この曲の作者はモーリス・ホワイト(アース・ウインド&ファイアー)で、この曲がいわゆるアースサウンドの母体となったのではないかとも思う。彼女たちはこの後「ブギー・ワンダーランド」でもアースと共演しているので、なんとなく彼らの妹分的なイメージがある。

さて、この3曲を聴き比べてもらえれば一目瞭然(一聴瞭然?)だが、コード進行とリズムパターンが酷似している。

ただ、僕が言いたいのは「パクるのは良くない」という正論では決してなく、むしろ、この「センス溢れるコード進行」と「使い減りしない軽快なリズムパターン」が、いかに普遍性のあるものかということだ。実際、僕なんかこれらの曲を聴くと自然とステップを踏みたくなるような、そんな気持ちになるのだが…

ところで、本コラムを書くに当たって YouTube の中でネットサーフィンしていたら、とても面白い動画を発見した。

ジェニ・ルドルフという(無名?)シンガーソングライターがこの3曲を歌っているのだが、何と! 1曲ごとに別撮りした動画を、画面を3分割させて同時再生しているのだ。それが見事にシンクロしていて、いかにこの3曲が似ているかを証明している。もしこの少女が何者かご存知の方がいたら、是非教えて欲しい。

Song Data
Emotions / Mariah Carey
作詞・作曲:Mariah Carey, David Cole, Robert Clivilles
プロデュース:Mariah Carey, David Cole, Robert Clivilles
発売:1991年8月13日

Billboard Charts
■ Got To Be Real / Cheryl Lynn(79年2月17日 12位)
■ Best Of My Love / The Emotions(77年8月20日1位)
■ Emotions / Mariah Carey(91年10月12日1位)

※2016年9月29日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 中川肇

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