元富山市議3人有罪判決 政務活動費訴訟で富山地裁

 富山市議会の政務活動費不正で、領収書を偽造し政活費をだまし取ったとして詐欺罪で在宅起訴された元市議の中川勇(72)、谷口寿一(56)、市田龍一(64)の3被告の判決公判は17日、富山地裁で開かれた。大村泰平裁判長はそれぞれに懲役1年6月、執行猶予4年(求刑・懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。市議会の政活費不正を巡る判決が出るのは初めて。

 判決理由で大村裁判長は「被害金額は多く、身勝手な動機で不正に返還を免れさせたことに酌量すべき点はない」と指摘した。さらに、中川、谷口の両被告については「犯行の発覚を防ぐため、領収書の作成に利用していた印刷会社に接触して偽装工作を行っており、情状は悪い」と断じた。

 一方で、いずれも議員を辞職した上で被害弁償をしており、市政に対する信頼を失わせたことへの謝罪の気持ちを述べているなどとして、執行猶予を付けた。

 領収書を偽造する手口などを会派内で共有する組織的不正の有無には踏み込まなかった。

 判決によると、3人は2012年4月から16年4月にかけ、実在する会社名義の虚偽の領収書を準備するなどし、中川被告が約521万円、谷口被告が約468万円、市田被告が約510万円の政活費をそれぞれだまし取ったとしている。

 代理人弁護士によると、3人とも「現時点では控訴しない方針」という。

 県議と富山、高岡の両市議の計18人が辞職した政活費不正で刑事裁判の判決が出たのは、昨年5月に執行猶予付き有罪判決を受けた矢後肇元県議会副議長に続き2例目となった。

 富山市議会を巡っては、現職の村上和久被告(58)も詐欺罪で在宅起訴され、7月に始まった公判で起訴内容を否認している。

■会派のモラル欠如裏付け  有権者の負託を裏切り税金が元となる政務活動費をだまし取ったとして、富山市議会自民党会派に所属していた元市議3人に有罪判決が言い渡された。実在する印刷会社名義の領収書を作成する手口などが共通しており、会派という組織内で不適切な運用が横行していたことがうかがえる。

 公判の被告人質問で、市田被告は「同じ会派の先輩にやり方を教わった」、谷口被告は「『せっかくもらったものは使い切ろう』という風潮があった」とそれぞれ口にした。両被告が不正を働いていた時期と、中川被告が会派代表を務めていた時期は重なっていることも分かった。

 政務活動費は会派に対して交付され、その収支報告書は会派の代表者名義で議会事務局に提出する。判決では組織的不正の認定までは踏み込まなかったが、3人のだまし取った金額が各400~500万円台に膨らんだのは、会派全体としてモラルが欠如していた裏付けとなるのではないか。

 谷口被告は、同じく詐欺罪で公判中の村上被告から白紙の領収書を受け取っていたことも明らかにした。起訴内容を否認し続けている村上被告の公判では谷口被告の証人尋問が検討されており、実現すれば真相究明に向けた焦点の一つになるはずだ。(社会部・吉本佑介)

© 株式会社北日本新聞社