伊藤智、藤川、石井、井川…元女房役が明かす、球を受けてきた中で最高の投手とは?

阪神・藤川球児【写真:荒川祐史】

藤川は「真っすぐだけなら一番」、井川は「3つしか球種がないのに勝つ」

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜で捕手としてプレーし、昨季までヤクルトで2年間バッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏。日本ハムでは正捕手として活躍したものの、ヤクルトや阪神での役割から“2番手の天才”とも呼ばれた同氏が現役時代にボールを受けてきた多くの名投手の中で、最も凄いと感じたのは誰だったのか。名前が挙がったのは4人だ。

「トータルで一番凄いピッチャー……(藤川)球児か伊藤智仁か(石井)一久ですね。井川(慶)も凄いと思いましたよ」

 最初に名前が挙がったのは、阪神の藤川球児投手。野口氏は阪神時代の2003~08年に女房役を務めた。代名詞の“火の玉ストレート”には「真っすぐだけ見たらあれが一番」と語った。「(全盛期は)比較対象がいないんじゃないかってくらい凄かったですね」と言うが、39歳を迎えた今季は7年ぶりに守護神返り咲き。まだまだ衰える気配を見せない。

 同じく阪神時代にバッテリーを組んだのは井川慶投手。阪神のエースとして2度のリーグ優勝に貢献し、最多勝を1度、最多奪三振を3度受賞した。2004年10月4日の広島戦では、井川-野口のバッテリーでノーヒットノーランも達成している。「3つしか球種がないのにあれだけ勝つ。真っすぐ、スライダー、チェンジアップしかないんですよ」。井川は2017年を最後にプレーはしていないが、現在も正式に引退は表明していない。

伊藤のスライダーは特別だと語る「あれだけスピードが出ててあれだけ曲がる」

 野口氏は、ヤクルト時代にバッテリーを組んだ伊藤智仁元投手(現楽天投手コーチ)のスライダーは特に凄かったと回顧する。ルーキーイヤーの1993年に前半戦だけで、7勝2敗、防御率0.91の大活躍。7月4日に離脱してシーズン終了まで戻らなかったが、新人王を獲得した。

「エグいですね、エグい。味方で良かったと思いました。捕るのは捕れるけど、打てませんよ、あんなの。あれだけスライダーにスピードが出ててあれだけ曲がるんですよ。右バッターの体に向かって出て、アウトローに決まるんですよ。それで135キロとか出てるんですよ。打てますかそんなの」

 阪神で藤川とともに“JFK”を担ったジェフ・ウィリアムス元投手のスライダーも凄かったというが、「ただサイドスローですからね。サイドスローならいそうな感じしますよね、あれだけ曲がっても。智さんは上から投げてるわけですからね」と野口氏は笑う。やはり伊藤は特別だったという。

 伊藤はその後、故障に苦しむキャリアを送ったが、その鮮烈な活躍は今でも語り継がれている。同じようにその投球を受けた捕手にも強烈な印象を残したようだ。(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2