火星の北極最新画像、米欧の宇宙機関が相次いで公開

9月中旬に入り、NASAと欧州宇宙機関(ESA)から相次いで火星の北極域を撮影した画像が公開されました。どちらの画像も、火星の春に見られるダイナミックな現象を捉えています。

■火星の北極で発生した雪崩をNASAの火星探査機が撮影

NASAは9月11日、火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」に搭載されている高解像度カメラ「HiRISE」によって撮影された、火星の北極域の画像を公開しました。

画像が撮影されたのは2019年5月29日で、火星の現地時間13時14分のこと。左側には火星の極域に見られる層状の堆積物が写っています。

火星の北極には水と二酸化炭素の氷が塵とともに堆積しており、撮影されたエリアではその断面が高さ500mほどの崖に現れています。混ざり合っている氷と塵の比率によって堆積層の色合いが異なっており、表面には塵が少ない氷の層が広がっています。

注目は画像の左上に写っている煙のようなもの。これは、太陽光に温められて不安定になった堆積層の一部が崩れ、雪崩のようにして崖を駆け下ったために舞い上がった塵の埃とみられています。

■ESAの探査機は火星の北極に広がる砂丘を撮影

ESAは9月16日、ロシアのロスコスモス(Roscosmos)と共同開発した火星探査機「エクソマーズ」を構成する周回探査機「トレース・ガス・オービター(TGO)」が撮影した、火星の北極域に広がる砂丘地帯の画像を公開しました。

画像が撮影されたのはNASAが公開した先の画像よりも4日早い5月25日で、火星の北緯75度付近を捉えたものとなります。

冬の間、砂丘の表面は二酸化炭素の薄い氷に覆われており、火星の春の訪れとともに温められた氷が昇華します。食品の保冷などに使われるドライアイスが気体になって消えていくのと同じ現象ですね。

撮影された砂丘地帯では、低いほうから二酸化炭素の氷が昇華していくといいます。すると、まだ昇華していない氷と砂とのわずかな隙間に、気体になった二酸化炭素が貯まっていきます。

閉じ込められた二酸化炭素は、上にかぶさっている氷が昇華し始めて割れたとき、周囲の砂を巻き込みながら勢いよく噴き出します。画像で示されている黒い模様は、こうして二酸化炭素ガスと一緒に撒き散らされた砂の分布を示しています。

もしも春の砂丘地帯に立つことができたら、あちこちで弾けるように砂が舞う様子を見ることができるのかもしれません。

また、画像の右側には、カシューナッツのような形をした砂丘が幾つか見えています。左側の砂丘地帯からやや孤立して存在するこれらの砂丘は、湾曲した方向が風下を示しています。

こうした砂丘の様子を長期的に観察することで、火星の表面にある堆積物がどのように運ばれていくのか、その仕組みを理解することにつながります。

Credit: NASA/JPL/University of Arizona ; ESA/Roscosmos/CaSSIS
source: NASAESA
文/松村武宏

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