外国人をおもてなし 大磯町内巡るガイドツアーを企画

手作りのはんぺん作りに挑戦する外国人ら=大磯町保健センター

 横浜や鎌倉、箱根に次ぐ「第4の観光地」を目指す大磯町で、訪日外国人客の開拓に住民有志が取り組んでいる。普段は日本人観光客を案内することが多いNPO法人「大磯ガイド協会」が16日、外国人向けに町内を巡るガイドツアーを企画。参加者は少なかったが、おもてなしを尽くした関係者は「地道な取り組みをしていくことが大事」と手応えを口にした。

 「多いときには500羽以上が海の水を飲みに飛んで来ます。最近は外国人の野鳥愛好家も多く訪れます」

 アオバトの集団飛来地として知られる照ケ崎海岸。野鳥愛好家らのグループ「こまたん」のメンバーが解説した。小雨の中でも数十羽が飛来し、岩礁に降り立つ様子を参加者は望遠鏡で観察。優雅に滑空するアオバトの群れに歓声を上げた。

 続いて、創業140年を超す老舗「井上蒲鉾(かまぼこ)店」(同町大磯)の5代目の井上寧さんの指南ではんぺん作りにも挑戦。参加者はすり鉢でつぶした魚のすり身を付け包丁でたたいたり延ばしたりして形を整えていった。

 初めて外国人を指導した井上さんは「外国人の方が日本の文化に対しフラットな目で見てくれる。訪日客を通じて伝統を伝えていくのも大事」と強調。今後は外国人観光客を対象に店独自の催しを企画していくという。

 ツアーは同協会内のグループ「WTO(Welcome To Oiso)」が昨年に続いて主催。英語のガイド付きで、このほか日本三大俳諧道場と知られる鴫立庵なども案内した。

 同協会運営委員の斎藤直人さんは「街を見るだけでなく、体験型イベントで外国人に興味を持ってもらいたい」と強調する。米国から2度目の来日というトム・ブランチさん(66)は「大磯は東京と比べて静かな場所。素晴らしい経験ができ、大磯のことを知ることができた」と喜んだ。

 斎藤さんは「大磯はぽっと日本に来た外国人が足を運んでくれる観光地ではない」と課題も口にする。外国人向け観光サイトにも情報を寄せたが、この日の参加者は4人。ガイドの1人は「国は東京五輪などで訪日客が増えると宣伝はするが、(大磯は)鎌倉と違って現実には集客に苦労する」とため息をつく。

 町によると、昨年度に町内を訪れた観光客数は約110万人。そのうち訪日客の数は分からないが「町内のホテルに年間2万人程度の外国人が宿泊している」(町担当者)という。

 同協会は今後も年1回の訪日客向けのイベントに加え、留学生との交流にも力を注ぐ。同協会の担当者は「参加者がSNSで世界に発信してくれることもある。交流を通じ地域の文化を知ってほしい」と草の根の活動に意欲を見せる。

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