天然痘保管施設で爆発炎上、ロシアの施設は安全か

By 太田清

天然痘ウイルスの電子顕微鏡写真

 ロシア・シベリアのノボシビルスク州コリツォボにある生物学研究施設、ロシア国立ウイルス学・生物工学研究センターで16日午後、爆発があり、作業員1人が重いやけどを負い病院に搬送された。ロシア通信などロシアの主要メディアが伝えた。同センターには、研究などのため、天然痘のほかエボラ、炭疽など危険な疾病を引き起こすウイルス・細菌株が保存されており、その漏出が懸念されたが、コリツォボのニコライ・クラスニコフ市長は「生物学的な危険はない」として漏出はなかったと強調した。 

 特に天然痘については、ワクチン接種の効果で1980年、世界保健機関(WHO)が根絶宣言を出し、地球上からなくなったものの、バイオテロ対策としてアメリカ疾病予防管理センター (CDC)とロシアの同センターでの保管が認められていた。現代では免疫を持つ人はほとんどいないことから、万が一にも漏出すれば大きな被害が出ると予想されている。 

 ノボシビルスクのニュースサイト「ナーシ・ドーム・ノボシビルスク」によると、爆発は6階建ての建物の5階の一室で発生。部屋の改修作業中にガスボンベから漏れたガスが爆発、約30平方メートルを焼いたが消防隊により消し止められた。爆発で部屋の窓ガラスがすべて破壊されるなどした。同センターは「部屋にはウイルスや細菌など生物学的危険物は保管されていなかった」としている。 

 同センターは1974年に前身組織が設立され、旧ソ連時代にはソ連の生物兵器禁止条約署名と条約発効にもかかわらず生物兵器開発に従事されていたとされるが、ソ連崩壊後は、主にウイルス・細菌による疾病予防やワクチン開発などを行っている。ウイルス・細菌を封じ込めるレベル4の最高度安全実験施設だが、具体的な設備・構造、実験内容、天然痘の保管場所など国家機密として明らかになっていないことが多い。 

 2004年5月にはベテラン女性研究員がエボラウイルスの付着した注射器を誤って自分の手に刺し感染、2週間後に死亡する事故があった。 (共同通信=太田清)

ノボシビルスク

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