家具・雑貨で物件魅力 県内企業、「ホームステージング」に商機

注文住宅の見学会に向け、家具の配置などについて話し合う米三とフォルムゼノマの社員=富山市内

 新築や中古住宅に家具、雑貨などを置いて物件の魅力を高める「ホームステージング」を事業に取り入れる動きが県内企業で広がっている。家具販売業がレンタルに乗り出し、住宅メーカーと成約率向上に取り組むなど業界の枠にとらわれない協業が進む。国内市場の縮小が懸念される家具や住宅の販促につなげる狙いがある。

 米三(富山市中央通り、増山輝社長)は今年4月にHS(ホームステージング)事業部を発足させた。県内の住宅メーカー約10社と協力し、家具のコーディネートを担う。

 新築の分譲や注文住宅、マンションなどで家具の配置について米三社員がメーカー社員と話し合い、住まいの特徴に応じてテーマやイメージを設定して提案。家具や生活雑貨など1万点を超える品ぞろえを生かし、見学者が実際にその物件で暮らすイメージを持てるような空間づくりに力を入れている。

 住宅メーカーのフォルムゼノマ(黒部市荻生、野嶋亨社長)は、手掛けた注文住宅やリノベーションした住宅の展示会でホームステージングを活用している。米三などと協力し、床材やクロスといった内装に合わせた雰囲気を演出。担当者は「施主の要望を反映した室内空間を実現したい」と話す。

 住宅メーカーに加え、賃貸住宅のオーナーや管理会社からホームステージングの依頼を受けているのが、家具販売のミヤモト家具(富山市千石町、宮本豊彰社長)だ。家具レンタル専用倉庫を持ち、家具や雑貨、観葉植物など約1万点をそろえる。

 賃貸マンションやアパートで受注したケースでは、入居者の内見時に効果があり、早期に空室を解消できたという。宮本社長は「施主へのヒアリングを通じてしつらえを工夫し、物件の付加価値を高めたい」としている。

■都市部は主流 県内は普及見込み  米国では中古住宅の市場規模が大きく、活発な取引を背景にホームステージングが一般的なマーケティング手法とされる。中古住宅をできるだけ早期に、より高い価格で販売したい売り主のニーズが背景にある。

 ホームステージングは、インテリアコーディネートや片付け、掃除などを通じて対象の物件をモデルルームのように仕上げる。内見した際の第一印象を高めるとともに、生活感のある展示によって物件の購入や入居を決める後押しになる効果が見込まれる。

 ただ、専門知識や高い演出能力が求められることから「ホームステージャー」と呼ばれる専門家が米国で活躍している。日本では日本ホームステージング協会(東京)が2013年に発足。ホームステージャーの認定資格を設け、片付けや遺品整理といった基礎から内装写真の撮影など高度なテクニックをカリキュラムに盛り込んでいる。

 同協会の野口幸恵理事は日本でも大手不動産会社がホームステージングに参入してきたと指摘。「東京や大阪といった都市部、不動産取引が活発化している沖縄や北海道では住宅売買の際に必要な手法となりつつある。今後、富山でも普及するだろう」と話した。(経済部・池亀慶輔)

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