石木ダム全用地収用 円満解決願っていたが… 推進派、首長ら複雑な表情

 石木ダム建設事業で関係自治体の首長や推進団体関係者は、円満ではない「強制収用」に複雑な心境をのぞかせた。ダム建設を求めつつも、行政代執行で住民を排除するような事態は避けてほしいと望む声も聞かれた。
 川棚町の山口文夫町長は「円満な話し合いでの解決を願っていたので、(一部の)明け渡し期限を迎えたことは残念」とした上で、「古里に住み続けたいという思いは理解できるが、事業に協力し、移転していただいている8割の地権者の思いも大切にしなければならない」とコメント。移転した元住民の一人は「強制収用は自分が泣く泣く土地を出て行った当時に、想像していた最悪の事態。本当に何と言っていいのか」と言葉少なに語った。
 全用地収用について「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の寺山燎二会長(81)は、「水不足を解消するため私たちは建設をお願いするだけ」と冷静に受け止めつつも、「行政代執行は望まない。最後は(両者が)納得いく形に向かってほしい」と求めた。中村法道知事と反対住民が約5年ぶりに面会したことについて、佐世保市の朝長則男市長は「内容を把握していないのでコメントできない。県と足並みをそろえ進める」と述べるにとどめた。

© 株式会社長崎新聞社