ホンダ田辺TDシンガポールGP直前インタビュー:フェルスタッペンのパワーロス症状は「考え得る限りの再現テストを行って対策」

 ヨーロッパラウンド最終2戦の第13戦ベルギーGP、第14戦イタリアGPでは、最新スペック4を投入しながらも予想以上に苦戦を強いられたホンダ。トロロッソにはオイル漏れ、レッドブル側にはパワーロスの問題も出た。それに対し今週末のシンガポール市街地サーキットは、両チームともに好成績が期待できる。一方で前戦での懸念は、完全に解消されたのか。田辺豊治テクニカルディレクターに、直前プレビューを聞いた。

――まずイタリアGPでの(ダニール・)クビアトのオイル漏れですが。
田辺豊治F1テクニカルディレクター(以下、田辺TD):(アレクサンダー・)アルボンがコースアウトして、砂利をまき散らした。それがすぐ後ろを走っていたクビアト車のオイルクーラーにダメージを与えました。

 それで徐々にオイルが漏れ出し、ピットインの際にオイルに火が付いたということです。ただパワーユニット(PU/エンジン)自体には、ダメージはありません。燃えたところや、消火剤のかかった部分などを交換して、今後も十分使用可能です。

――(マックス・)フェルスタッペンのパワーロスについて、再発の可能性はありませんか?
田辺TD:それは、大丈夫です。ごく簡単に言えば、セッティングを変えて、考え得る限りの再現テストを行って、再発はほぼ起きないだろうという結論に達しました。

――ドライバーの運転の仕方で、あの症状が出たわけですよね。
田辺TD:ドライバーの運転の仕方で、あそこに入ってしまった。駆動輪が空転して、レブリミットに当たったという状況ですね。

――では今後、同じようにやっても症状は出ないということでしょうか。
田辺TD:その確認をしました。

――今週末のシンガポールは、パワー感度がさほど高くないサーキットですが、最強スペック4を使わない選択肢もありますか?
田辺TD:使います。何台使うか、いつ使うかについては、ノーコメントですが。

――ここでスペック4を使う意味は、十分にあるということですか?
田辺TD:パワー感度が低くても、パフォーマンスの高いパワーユニットの方がいいですから。あとはパッケージとしてどれだけのパフォーマンスを発揮できそうか、そしてエンジンライフとのバランスですね。

――ここはパワーサーキットではないですが、シンガポールならではのパワーユニットに対する負荷はありますか?
田辺TD:そうですね。全21戦の中では、最もコーナー数の多い部類ですし、そうするとシフトチェンジの際のパワーユニットの使い方において、違った意味での高い負荷がかかります。ただ一般的には、スパ(・フランコルシャン)、モンツァに比べれば楽です。

――これまで何度か出て来たスロットルラグの問題は、立ち上がりでパンと踏んだ時に出やすい印象です。シンガポールのような直角コーナーの連続したコースは、それが再発する恐れはないですか。
田辺TD:それは、ありえます。(スロットルラグ問題が)出やすいコースではあると思います。もちろんいろいろ手を打っていますし、それで初日を走って状況を見て、手直しをして行く感じですね。

 結局のところ、ドライバーがほしいと思ってる部分、あるいはドライバーがどれだけ満足してるか、逆にどれだけど不満なのかは、データには出ないわけです。そこはドライバーから、直接話を聞くしかない。なのでドライバーの技術フィードバックは、重要なんですね。

――スタートに関してはどうでしょう。イタリアでは、スムーズでしたが。
田辺TD:スタートに関しては車体側とも密接に関わっていることでもあり、両者でいろんな領域をひとつひとつ詰めて行く作業を続けてきました。モンツァでまあまあうまく行ったのは、その連携の成果が出たと言っていいと思います。

――コース特性もコンディションも違うシンガポールでは、また初日から確認作業をやり直すわけですね。
田辺TD:そういうことです。

2019年F1第15戦シンガポールGP マックス・フェルスタッペン、アレクサンダー・アルボン

© 株式会社三栄