クライミングはやらないけど… 登山でロープワークって必要?
ロープを結ぶことで、さまざまな用途に活用できる『ロープワーク』。この技術を「登山で使う」とすると、穂高や剱岳などの岩壁を登る難関ルートをイメージする方が多いのではないでしょうか。
もちろんクライミングにおいてロープ技術は必須ですが、登山で使えるロープワークはそれだけではありません。
ロープワークを覚えておくことで、テント泊やビバーク時などに不要な装備を減らし、より軽量でシンプルな登山を楽しむことができるんです。
ロープワークって聞いたことあるけどよくわからない…
一括りにロープワークといってもその種類はさまざま。世の中には3,000種以上のロープワークがあると言われ、また一つの結び方であっても「和名」や「英名」などが存在します。
そう聞くと、なんだか気が遠くなってしまいますよね。でもご安心を!
登山で押さえておきたいロープワークは多くても10種類程度。どれもコツを掴めば簡単に結べるものばかりです。それだったら「なんとか覚えれそう」という感じがしてきませんか?
ロープワークの“大切なポイント”3つ
ロープワークは3つの基本的な考え方から成り立ちます。
実際のところ「結べればなんでもよくない?」と思っている方も多いかもしれませんが、環境が変わりやすく素早い行動が必要な登山こそ、ロープワークが大活躍するシーンでもあるんです!
登山で使えるロープワーク“BIG3”が登場!
今回はそんな数あるロープワークの中から、テント泊や非常時のビバークなどを想定し、3つの結びをチョイス。
【1】ボーラインノット(和名:もやい結び)難易度:★★☆☆☆
【2】トートラインヒッチ(和名:自在結び)難易度:★★★☆☆
【3】エバンスノット(和名:二重止め結び)難易度:★★★☆☆
それぞれのロープワークを見ていきましょう。
【1】頼りになる結びの王様『ボーラインノット』
登山中、ロープや張り網を固定したい場面で活躍するのが『ボーラインノット(もやい結び)』。素早く結べて強度も高く解きやすいため、登山だけでなく幅広いアウトドアシーンで活躍します。
その信頼性の高さから「キング・オブ・ノット」と呼ばれるほど。覚えておくと何かと便利なロープワークです。
特徴
・強い強度を持ちながらも、解くのが簡単・いろんなロープワークとの応用が効く
ボーラインノットの結び方
①ロープの末端を、固定したい対象物(木やテントのループなど)に巻きつけます。
②ロープの末端側が上にくるように輪を作り、末端を輪の中に通します。
③輪から出たら、手前に伸びているロープを下からくぐります。
④手前のロープを乗り越えて、また輪の中へ戻ります。
⑤末端のロープと手前のロープを強く締めます。
⑥完成です! 最後に手前のロープ(荷重がかかる側)を思いきり引っぱって、しっかり固定されているかを確認しましょう。
<実際にやってみるとこんな感じ>
こんな登山シーンで活躍!
<テントやツェルトの設営に>
ボーラインノットはテントと張り網を固定するのに最適。この部分は何かと結び方に悩みがちですが、ボーラインノットなら強風などでも外れることがないので安心です。
反対側にテンションがかかっている場合は結べないため、この結びをした後にペグ側を固定するようにしましょう。
【2】張り具合を自在に調整『トートラインヒッチ』
テントやツェルトの張り網をペグに結ぶ時に活躍するのが『トートラインヒッチ(自在結び)』。テントの固定だけでなく、ロープをピンと張りたい時などにも使える便利な結びです。
その名の通り結び目をスライドさせることでロープの張りの強さを自在に調整することができます。
特徴
・結び目をスライドさせることで、ロープの張り緩みが自由自在
トートラインヒッチの結び方
①ロープの末端をペグや木などの固定したい物に通します。
②手前に伸びるロープに末端を一周巻きつけます。
③末端側が上にくるように手前のロープに巻きつけます。
④末端側が上を通るようにして、輪を作ります。
⑤末端に続いているロープの下側を通るよう手前のロープに巻きます。
⑥図のように、結び目から出ているロープを引き、結び目をしっかり締めます。
⑦完成! 2つのコブを手前に引くことでピンと張ることができ、奥にスライドされるとゆるまります。
<実際にやってみるとこんな感じ>
こんな登山シーンで活躍!
<自在金具が壊れてしまったときに>
自在結びには自在金具と同様の機能があるので、いざ「自在金具が壊れてしまった」となってもすぐに代用することができます。
<緊急時のツェルト設営でも>
先に紹介したボーラインノットで先に木などに固定しその対面にトートラインヒッチを使うことで、ロープを横一直線にピンと張ることができます。
例えば、そのロープを使ってツェルトを張ることも可能。ポールよりも手間がかからず、重心が安定したツェルトが設営できます。
※今回は紹介していませんが、ツェルトとロープの固定には「スリング」を使って『クレイムハイスト』という結びを使用しています。
【3】石を使ってロープをペグ代わりに『エバンスノット』
登山ではペグが刺さらない場所でのテント設営もしばしば。ペグの代わりに石を使って固定する際に便利なのが『エバンスノット(二重止め結び)』です。
この結びは結び目をスライドされることで、ロープの先端をキュッと締め付けることができるのが特徴。しっかり固定できるので石もズレにくく、逆にゆるめるのも容易なので調節も簡単です。
特徴
・結び目をスライドさせることで、先端を締め付けることができる・ゆるめるのも簡単で解きやすい
エバンスノットの結び方
①ロープの末端を、固定したい対象物(石や木)に巻きつけ、写真のように末端を手前に伸びるロープの裏側に通します。
②写真のように、中心に向かって3周巻きつけます。
③末端を3周巻いた輪の中に通します。
④末端のロープを引き、結び目を締めます。
⑤手前に伸びるロープを引くことで、結び目が中心に向かって移動します。
⑥固定する対象物にキュッと締め付ければ完成。結び目を手前に引けばゆるまります。
<実際にやってみるとこんな感じ>
こんな登山シーンで活躍!
<通し穴がない場所にロープを固定したいときに>
タープを張る際に「通し穴がないところからロープを引きたい」というときはエバンスノットの出番です。
タマゴサイズの石をタープの裏側から押し込み、そこにエバンスノットで締め付けることでそこが固定ポイントに。
この技術を使えば、レジャーシートなどもタープ代わりに使うことができます。
ロープワークの練習には「細引き」がオススメ!
いざロープワークの練習をしようと思っても、どんなヒモを使えばいいか迷ってしまいますよね。そんな時は「細引き」が便利!
細引きには2mm〜7mmほどの太さがありますが練習には4mm程度の太さがオススメです。また10m程度の長さで購入しておけば本番の登山でも使える道具になるので一石二鳥。大手登山用品店であれば欲しい長さで購入することができるので、ぜひ活用してみましょう。
ロープワークは覚えてしまえば一生モノ!
なにかとハードルが高く感じるロープワークですが、一度覚えてしまえばそれは一生モノの技術となります。何度も何度も練習をした後、ぜひ本番の登山で使ってみてください。実際の現場でやってみることが何よりも自身の経験に繋がります。
ロープワークをサラッと使って、シンプルでかっこいい登山を楽しみましょう。