
人に備わる免疫の働きを促す「がん免疫療法」の肺がんへの効果を予測する血清バイオマーカー(指標)を、川崎医科大の岡三喜男特任教授や長崎大の福田実准教授らの研究グループが世界で初めて発見した。がん免疫療法は効く人が限られ、医療費も高額になるため、治療前に効果を測定する技術が求められている。
世界肺癌学会の公式誌「Journal of Thoracic Oncology」で先月、発表した。
同大によると、研究グループは2015年ごろから、このテーマを研究してきた。肺がんへの免疫反応を引き起こす二つの抗体に着目。いずれかの抗体が体内にあれば、オプジーボなどの一部のがん免疫治療薬がよく効くと分かった。
がん免疫療法は18年にノーベル医学生理学賞に輝いた京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授らが開発し、さまざまながんの治療に活用されている。ただオプジーボなどを単独で使うと肺がんでは2割程度の患者にしか効かない。さらに、オプジーボは1回投与すれば、薬価だけで約40万円かかってしまうという。
この指標が実用化されれば、患者は血液検査を受けるだけで、免疫療法が効果的か否かが分かる。患者や国の医療費軽減も期待できるという。
長崎大の福田准教授は「簡単にかつ20分程度でがん免疫療法が自らに効果的かどうかを確認できる。がん免疫療法を試すかどうかを悩んでいる人には、新たな目安になる。できるだけ早く実用化したい」としている。
■ズーム/がん免疫療法
本庶氏の研究チームが、体内で異物を攻撃する免疫反応にブレーキをかけるタンパク質を突き止め、がんの免疫治療薬開発に道を開いた。この原理に基づき開発されたオプジーボは2014年に皮膚がんの薬として発売され、肺や腎臓などのがんへ対象を拡大。一部の患者は長期間の生存が可能になったが、医療財政を圧迫する超高額な薬としても話題になった。