イレギュラー発生!国際線CAの台風時のフライト体験をレポート

台風時のイレギュラー体験談

秋は台風の多い季節。

台風、と聞いただけで「今日のフライトはどうなるのか」お客様はとても心配になりますよね。

実は、乗務しているCAも台風の予報が入るとドキドキします。

自分の乗務便は常に定時運行、ノーイレギュラーであってほしいもの。

分かってはいるものの、天気には逆らえないのが航空会社勤務の宿命。

今回は、実際にCAが体験した台風によるイレギュラーフライトをCA目線でご紹介いたします。

 

 

上空でまさかのキャプテンアナウンス。行先は広州ではなく!?

今回お話するのは、ある年の秋、羽田から広州へ向かうフライトエピソードです。

羽田発広州行き、乗員乗客約270名を乗せたフライトは定刻に出発し、順調に飛行を始めていました。

お飲み物とアペタイザーから始まるお食事のサービスも終盤を迎え、台風のニュースはあったものの揺れも少なく、終始穏やかなフライトが続いていました。

出発前のクルーブリーフィングでは、キャプテンからの情報で、「広州到着時に台風の接近はあるものの、今のところ特段問題はない」とのこと。

CAも安心して広州に向かうことができる、と胸をなでおろしていました。

航空会社によりますが、筆者の航空会社では目的地到着40分前ほどに、キャプテンから到着情報のアナウンスが入ります。

目的地の到着時間や天候、たまに空港周辺が混雑しており着陸に時間を要する、などの情報も加わります。

それを受け、チーフパーサーから、機内販売終了のお知らせのアナウンスが続くのですが、この日は全く音沙汰なし。

目的地到着20分前になっても、アナウンスをする気配は一向にありません。

 

CAもお客様も感じる「なんかおかしい?」

「到着前のアナウンスが全くないなんてなんかおかしいな。」と、さすがに客室乗務員たちも、チーフパーサーのいるファーストクラスの動きが気になってきました。

しかしそこは、ファーストクラス。

緊急時を除いて、エコノミークラスのCAが許可もなく、ずかずかと入ることははばかられます。

キャプテンやチーフパーサーから何か連絡があるだろうと、後方キャビンで辛抱強く待っていたのですが刻々と迫る到着時刻に段々不安が募ります。

「機材に何かあったのかな」「到着地が混んでいる?」

色んな憶測がCAの間で飛び交っています。

また着陸に向けとっくに降下を開始してもいい時間なのに、降下の気配も全くありません。

その時、キャプテンアナウンスがやっと入りました。

なんと、それは広州ではなく、厦門へダイバートのアナウンスだったんです!!

 

広州から厦門へダイバート!急遽厦門空港に着陸することに!

ダイバートとは、天候などの理由により、本来の目的地とは違う代替空港に着陸すること。

つまり、予定していた目的地には到着できなくなり、仕方がない理由とはいえ、お客様にとってもとても困惑することになります。

待ちに待ったキャプテンからのアナウンスは、まさにダイバートのアナウンス。

息をのみ、必死に機長のアナウンスを聞く客室乗務員たち。

突然の天候不良による進路変更だったようで、パイロットも対応に追われ、客室乗務員に事前に知らせる時間がなく、お客様へのアナウンスで全体への周知となってしまったようです。

それから私たちは着陸の準備に追われ、お客様へのご説明、質問の返答、そして着陸に際し厦門へのダイバートは安全であることなどを伝えていると、すぐに着陸前の安全チェックの時間になりました。

チーフパーサーの情報から、厦門に一度着陸して天候の回復を待ち、また広州へ出発するとのこと。

しかし、天候の回復がいつになるかわからない場合は、厦門での宿泊も考えられるということ、も説明がありました。

定刻だと中国時間の18時半ごろには到着しているはずのお客様。

「突然厦門に行かされたお客様はどんな心境だろうか、きっと不安に違いないし、ご立腹の方もたくさんいるだろう。厦門に到着したらしっかりケアをしなければ。」

そう身を引き締めて、厦門到着後お客様に何をして差し上げることができるか、イメージトレーニングをしていました。

 

 

 

ダイバートへのお客様の反応は?CAに求められる対応は?

厦門空港に無事着陸した後、キャプテンからのアナウンスがすぐに入りました。

このまま天候の回復を待って、様子を見て再び目的地の広州空港へ出発すること、お客様にはこのまま機内でお待ちいただくこと、がアナウンスされました。

チーフパーサーからの指示で、お疲れのお客様に温かいコーヒーとお茶をご用意しお配りすることに。

また機内食のサービスは終了していましたが、夜も更けていたので、お腹がすいた方には余っているおつまみを提供するなどの対応に追われていました。

お詫びの気持ちを込めながら、丁寧にサービスすることに注力しましたが、びっくりしたのがお客様からのクレームが一切ないこと。

内心イライラされている方や、不安な方、慣れない厦門に行くことに不安を感じられる方もたくさんいらっしゃるはずなのに、声を荒げたり、CAに文句を言う方は一人もいらっしゃいませんでした。

「台風だからしょうがないね。」とおっしゃって我慢強く待っていただけるお姿に、こちらが感謝したくなりました!

お客様はもちろんですが、CAも乗務時間を大幅に超えていたので、疲れもピークに。

しかし温かいお客様や、働き者のCAたち、みんなで支えあい、団結できたようなフライトになりました。

 

いつどこで起きるかわからないイレギュラー

その後予想より早く広州空港周辺の天候が回復し、厦門空港に一時間ほど滞在した後、無事再出発。

広州空港到着時刻は大幅に遅れましたが、なんとか深夜に到着でき、お客様は翌朝からのお仕事に間に合うことができました。

台風もそうですが、いつどこで起こるかわからないイレギュラーフライト。

イレギュラー時には焦らずCAみんなで協力して乗り越え、巻き込まれてしまったお客様の気持ちに寄り添うことがとても大切です。

また自分が乗客として乗っている時にイレギュラーに遭遇した場合は、CAとパイロットを信じて、一致団結したフライトにしたいな、と自身の経験を通じて思います。

 

© シーエーメディアエージェンシー/ハニーコミュニケーションズ