台風17号 長崎被害 停電、暴風…不安な一夜過ごす

暗闇の中、懐中電灯を頼りに館内を巡回する施設職員=22日午後11時57分、長崎市古賀町、ショートステイ王樹

 台風17号の影響で、22日夕から23日にかけ発生した県内の大規模停電は最大で約7万6650戸に上った。ナースコールが使えなくなった介護施設では夜通し緊張感が張り詰め、各家庭ではろうそくやランプのわずかな明かりの下、不安な一夜を過ごした。

■暗闇の中 懸命の介護

 暴風域を伴い、長崎県に最接近した22日夕方ごろから各地で停電が発生。70~90代の55人が入所する西海市西彼町の「原爆被爆者特別養護ホームかめだけ」は午後5時半に電気が途絶えた。軽油が燃料の自家発電機は備蓄分を合わせても6時間程度しかもたない。天気予報から「長丁場になる」と判断。午後8時ごろ、軽油の調達を急いだ。
 午後8時を過ぎたころ、長崎市を中心に停電は4万6千戸を超えた。同市神浦江川町の「市みなと漁協外海支所直売店」は、水中に空気を送り込む装置が止まり、店内のいけすに入ったヒラスなど養殖魚約40匹が酸欠で死んだ。漁協関係者は「連休中に売るため仕入れていたがどうしようもない」と肩を落とした。
 午後9時半、諫早市小野島町の「諫早ゆうゆうランド干拓の里」の水族館では大型水槽のポンプが停止する緊急事態が発生。魚類2匹が死んだ。約5時間後に復旧したが「もっと長引いていれば魚が全滅していたかも」と関係者は冷や汗。
 停電が約7万6650戸のピークを迎えた午後10時ごろ、長崎市弥生町の一帯は暗闇に包まれていた。同町の児童支援員、角野悠さん(39)は自宅でキャンプ用のランプをともし、スマートフォンで停電情報を収集。「蒸し暑さが厳しいです」
 同じころ、同市古賀町の介護施設「ショートステイ王樹」では、職員に緊張感が走っていた。入居者が使う人工呼吸器の非常用電源は12時間分のみ。ナースコールも使えず、職員は懐中電灯を手に、夜通し入居者の様子を確認した。翌朝復旧し、勝矢圭一社長は「大ごとにならなくてよかった」と胸をなで下ろした。

■アーケード屋根落下

 夜が明けても生活への影響は続いた。西海市西彼町のスーパーには、アイスクリームや冷凍品のショーケースに「停電のため半額処分」との張り紙。101世帯132人が暮らす長崎市の離島、池島は停電のため桟橋が下りず、午前のフェリーが欠航した。
 前夜に強風の影響で、アーケードの屋根(縦約5メートル、横約4.5メートル)が落下した大村市の本陣通り商店街では、朝から関係者が状況を確認。同商店街の児島英二郎理事長は「人に当たらなくて良かった。原状回復とともに今後の対策も考えなくては」と話した。
 22日に「50年に1度の記録的な大雨」と発表された対馬市は一夜明け、断水や土砂崩れなど多数の被害が確認された。23日午後4時ごろ、給水車に水をくみにきた厳原町佐須地区の主婦、寄兼佳奈美さん(49)は「早く復旧してほしい」と疲れた表情を浮かべた。
 最大で約2万7300戸が停電した諫早市は、午後3時を過ぎても9千戸超が復旧せず。多良見町の一部地区では断水にも見舞われた。午後5時半、同町佐瀬の山本健朗さん(69)宅にもようやく明かりが戻った。「明日までかかるとあきらめていたのでほっとした。でも断水の可能性もあるので、まだ安心はできない」と不安そうに語った。

強風で落下した大村市本町のアーケードの屋根部分(縦約5メートル、横約4.5メートル)=23日午後4時40分

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