手話通訳テレビ電話で即時対応 川崎市、10月から試行

運用方法を説明したデモンストレーション。タブレット端末を通して手話でのやりとりを可能にする=川崎市中原区

 川崎市は聴覚障害者への窓口サービスを拡充する。各区役所と市聴覚障害者情報文化センターをテレビ電話でつなぎ、手話通訳を行う。従来の通訳者派遣事業から一歩進めた形で、急な来庁にも対応可能。2021年度からの本格導入を目指し、10月1日から試行する。

 市では現在、聴覚障害者からの依頼に応じ、各区役所の窓口に同センターから手話通訳者を派遣している。同センターによると、依頼は月に300件程度。ただ、事前の日程調整が必要で、市には区役所窓口に手話で対応可能な職員を配置してほしいなどの要望が寄せられていたという。

 新たなサービスは、各区役所と、田島、大師の両支所(いずれも川崎区)で今年4月から始めた多言語通訳システムを応用。各区役所、支所の窓口に3台ずつ配備したタブレット端末を介して行う。

 聴覚障害者の来庁時、窓口職員が同センターにテレビ電話で支援を依頼。同センターの通訳者が手話で即時に相談内容を聞き取り、音声で窓口職員に伝える。

 サービス浸透を狙い、市は20日夜に同センターで説明会を開催。実際の運用に則したデモンストレーションを行い、聴覚障害者らに意見を募った。

 説明会に参加してサービスを体験した麻生区の団体職員大山毅さん(42)は「時間がないときに筆談だと時間を取られてしまう」と現状の悩みを吐露。「窓口でスムーズに意思を伝えられることで、さまざまな問題を抱え込むことなく区役所を通じて解決できるようになるといい」と期待を寄せた。

 市オリンピック・パラリンピック推進室は来年度末までの試行期間で利用実態を調査し、トラブルや課題を検証していくとしており、担当者は「日本初ではないが、中身は日本一を目指す。皆さんと一緒に事業をつくっていきたい」と話している。

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