<隠れた名盤> TRIX『ECCENTRIX』 多彩でドラマティックなフュージョン・アルバム

TRIX『ECCENTRIX』

 ドラム、キーボード、ベース、ギターの4人編成のフュージョン・バンドによる、結成以来毎年新作を出しているという意欲的な通算16作目となるオリジナル。

 全9曲、YMOファンが喜びそうな東洋色の強い『中国天道虫』から、韓流ドラマのテーマ曲のようにスローな『雪の天使』、これから大きなフェスが始まりそうなほど期待感が高まるアップテンポの『Hercules』などかなり多彩。それでも、ラストの『Beetle Train』は爽やかな王道フュージョン系で綺麗にまとまっている。

 どの曲もドラマティックで、近視眼的な一部のJ-POPが苦手な人には、彼らのインストの方が、豊かな感情が想起されるかもしれない。特に、『ルリタテハの飛翔』あたりは、しっとりと進行しつつ、途中ブルージーになったり、ラストで光が見えてきたり、まさに蝶が飛び立っていく様子を見るようで感動的だ。

 CDのトレイ下にお茶目な仕掛けがある点も、アルバムタイトルゆえのアピールだろう(多分)。本作を聴けば、何かを人に伝える際、様々な表現を使ってみようと思うはず。

(キング・3000円+税)=臼井孝

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