遠近二つの目線を

 青くて、明るくて、きのうの空は「天気晴朗」と呼ぶにふさわしかった。周りに目線を落とせば、強風で倒された街路樹が撤去されて、土があらわになっていたり、木の枝が道路の脇にたまっていたりと、台風17号の爪痕がまだ残る▲JR大村線の一部区間では運転の見合わせが続く。長崎市の端島(軍艦島)は連絡橋などが破損して上陸が禁じられ、復旧のめどは立っていない▲生活上の不便は、もう解消しただろうか。この台風では県内7万6千戸余りが停電した。わずかに明かりをともし、不安な夜を過ごした方も数多い。人工呼吸器を用いる介護施設でも、冷凍品を並べるスーパーでも、現場は混乱し、被害も生じた▲その前の台風15号で被災した千葉県では、停電が一部地域でなおも続く。停電が長引き、防災無線の中継局では自家発電機の燃料が切れてしまい、情報の発信ができなくなった。被害は数珠つなぎらしい▲いま一度、天災はいつ、どこで起きるか分からないのだと心に刻む。千葉で広域停電が起きたとき、「あすはわが身」と構えたか。万全の備えをしていたか。自問し、自省している▲どこかの被災地に思いを致しながら、わが方へと引き寄せて考える。災害の絶えない今、あちらを見ては足元を見るという、二つの目線が要ることを肝に銘じる。(徹)

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