いよいよシーズン正念場を迎えるホンダ期待の海外若手3人衆。F2松下「優勝狙える」、F3角田、名取に聞く【F1ロシアGP】

 F1ロシアGPで行われるFIA-F3はこのソチ大会が最終戦で、FIA-F2もこのソチ、そして次のアブダビの2大会のみで今シーズンが終了する。F1へのステップアップを目指してF2に参戦中の松下信治(カーリン)、そしてF3の角田祐毅(イェンツァー)、名取鉄平(カーリン・バズレーシング)に今シーズンを振り返りつつ、ロシア大会に向けての手応えを聞いた。

 スーパーライセンス獲得にはポイントラインキング4位以上が必要なF2の松下信治。現在のランキングは6位で4位とは37点差。残り2大会で1大会で理論上は最大46ポイント獲得可能で、可能性は十分あるが、まずはこのロシアで結果を残さなければ最終戦でのランキング4位以内は遠のく。

「もう夏休み明けからずっとそうなんですけど、ひとつもレースを落とせないのでターゲットとしては優勝しないとダメだろうなと思っています」とロシア戦の木曜日に話す松下。このロシアのソチのサーキットと松下、そしてカーリンの相性は良く、期待は高い。

「僕がこのロシアに来たのは4年くらい前なんですけど、その時はいいレースペースで走れましたし、チームも昨年、このソチでクルマのパフォーマンスが良かったので練習走行次第ですけど、優勝は狙えると思っています。事前準備もしっかりしてやれることはやってきているので、それをひとつにまとめて出来ればと思いますし、抱負はもう優勝です」と松下。優勝の先には、ランキング4位以上のターゲットが見えてくる。

「そうですね。今、ポイントランキングの3~5位が固まっていて、まずは彼ら3人の前でレースをフィニッシュしないとダメなんですけど、今回はできると思っています。予選でトップ5に入って、そしてレースは強いと思うのでそこで順位を上げて頑張りたいと思います」

 F1へのステップアップにはスーパーライセンスの獲得が欠かせないが、松下はまさに今週末、シーズンの正念場を迎えることになる。

 このF1ロシアGPでは、FIA F2とともにFIA F3も行われるが、こちらのF3はこのソチでの2戦がシーズン最終戦となる。ホンダから参戦している若武者ふたり、角田は現在ポイントランキング8位、名取は22位と、期待された結果とはまだ言い難いが、このレース終盤にかけてふたりとも序々にその真価を発揮しつつある。まずはここ3戦で3度表彰台を獲得中の角田が今季のこれまでを振り返る。

「もう最終戦かという感触ですし、今のままの流れで行きたいなという気持ちです。シーズン終盤にかけて良くなっていったという手応え、どうして速くなったかというのは自分ではわかっているつもりなので、それを活かせれば今回も行けるかなと思っています。正直、この最終戦にきて、序盤戦にもっとポイントを獲っていればチャンピオンシップも変わってきたと思うので、そういう思いとともにシーズンがすごく早く感じています」と角田。

 初めて走るサーキットに、初めてのマシンにタイヤメーカー、そして異国の文化とネガティブな要素を考えればキリがないなか、どのようにシーズン中盤から調子を上げてこれるようになったのか。

「良くなってきたのは、乗り方、セッティングもありますけど、タイヤのウォームアップの仕方は一番大きな鍵になっていると思います」と、角田。

●悲願のF1ステップアップに向けてクライマックスを迎えるホンダの松下、角田、名取

「ピレリタイヤは予選で1周か2周くらいしか(グリップの)ピークがないので、日本で走っていたときのタイヤよりも全然、ウォームアップが難しいですね。日本の時はある程度、簡単にウォームアップできて100パーセント、タイヤのパフォーマンスが出て何周かアタックできたのですが、ピレリタイヤはウォームアップからドライバーしっかり荷重を入力していかないと100パーセントのパフォーマンスを引き出せなくて、それが1周しかもたない。それなのにレースではピークからのグリップの落ち幅が大きいので、しっかりとマネジメントしなければいけないのが日本の時と大きく違います」と、その詳細を話す。

「この最終戦、やはりレース1で勝ちたいですね。このコースはF3のマシンではみんな初めて走ることになるので、練習走行からのビルドアップが重要になってくるのかなと思います。どれだけ内容の濃い練習走行ができるかで予選順位も変わってくると思います。予選に向けて、自分のドライビングの詰め方、どれだけ自分の100パーセントのパフォーマンスに近づけるのかというのが重要だと思います」と角田。F3では今、一番勢いがある存在だけに、今週末の最終戦のパフォーマンスが楽しみだ。

 また、角田と同等、または角田以上にこの終盤戦にかけてパフォーマンスを上げてきてるのが名取だ。今季、F3と同時参戦している1週間前のユーロフォーミュラの第8大会バルセロナのレース2で見事初優勝。F3でも前々回のスパで初入賞を果たして、シーズン終盤にかけて本来の速さを発揮し始めている。

「今年は開幕戦、出だしから遅れてリザルト的には良くなかったんですけど、後半になるにつれて上り調子になってきて、ユーロフォーミュラでも先週のバルセロナで勝つことができて、自分のなかでも手応えを感じてきています」と名取。

「F3でも前回のモンツァでは練習走行で5番手、予選で6番手とスピード的には優勝できるレベルに来ていると思うので、後はレースで自分の駆け引き、組み立ての面がまだまだなので、そこをうまくできれば優勝はできると自分では思っています。このロシアがF3で今年最後になるので、今年の集大成として優勝だけを目指して行きたいですね。」と、ロシア大会への期待を話す。

 名取も角田同様、ピレリタイヤの特性に悩み、そして理解を深めて対応してきた。

「中盤以降良くなってきた一番の理由は、やはりタイヤマネジメントですね。このピレリタイヤがすごくクセのある特性なので、本当に予選で1周でタイムを出すドライビングスタイルと、レースでロングランでグリップを保たせるドライビングスタイルがまったく異なるので、そこを今年1年、すごく勉強しました」と名取。

「まだ来年のことはわからないですけど、少しでもF1に近づけるように世界で戦えるレースが出来ればと思っています」と名取が話すように、松下、角田も今季の成績はそのまま2020年の活動にもダイレクトに関係してくる。スーパーライセンスを獲得できればもちろん、悲願のF1へのステップアップの可能性が見えてくる。今シーズンのどの大会よりも結果が重要になる今週末のロシア大会、彼らの運命はどのように展開していくのか、しっかりと見届けたい。

FIA-F3第7戦イタリアで初優勝を飾った角田裕毅選手(イェンツァー・モータースポーツ)
まだ入賞1回ながらも確実にパフォーマンス上げて来ている名取鉄平。表彰台以上の結果を最終戦で見せたい

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