立ち退き組事務所、市が取得を 新湊の住民要望 市「活用目的ない」

地元住民が射水市に対して建物の撤去と土地の取得を求めている本江組の事務所=射水市桜町

 指定暴力団任侠山口組傘下の本江組の事務所(射水市桜町・新湊)について、地元住民が射水市に対し事務所建物の撤去や土地の取得を求めていることが27日、関係者への取材で分かった。2018年に組員が事務所を立ち退いており活動実態はないが、住民は建物の存在自体に不安を覚えている。一方、同市は「行政財産として活用する目的がない」として地元の要望に応じておらず、解決には時間が掛かりそうだ。

 2015年の指定暴力団山口組の分裂に伴う抗争を防ぐため、県警は本江組の事務所周辺を24時間体制で警備してきた。近くに小学校や病院、住宅地があるにもかかわらず物騒な雰囲気が続いたことから、住民と射水署などは「射水に暴力団は不要」を合言葉に事務所廃止に向けて動いた。

 16年には県警が威力業務妨害容疑で主要な組員を摘発し、組は事実上解散。17年には県暴力追放運動推進センターが住民に代わって組側に事務所の使用差し止めを求めて提訴。18年に和解が成立し、組員が事務所を立ち退いた。

 ただ、住民からは「事務所が別の暴力団関係者に渡るのではないか」など、事務所建物が残っていることを不安視する声が上がっていた。

 関係者によると、建物・土地を所有する男性は「もう必要ない」として放棄する意向を示している。住民は7月、市に建物の撤去と土地の取得を求める要望書を提出した。一方、市は8月末に「行政財産として活用する目的のある不動産しか原則として買わない」などと回答した。

 住民の一人は「建物の前は通学路。住民の生活の安全・安心のために、なんとか市に再考してもらえないかと思っている」と話す。

 暴力団事務所を巡っては、特定危険指定暴力団工藤会が、福岡県暴力追放運動推進センターを介して本部事務所(北九州市)を民間に売却することが決まった。本部事務所は18年12月、北九州市に固定資産税の滞納で差し押さえられていた。地元では、官民を挙げた暴力団追放運動の大きな節目としてとらえられているという。

■県内10年で暴力団激減

 県警は27日、県内の暴力団情勢について発表した。県内には5組織あるとされるが、そのうち本江組(射水市桜町・新湊)が解散状態のため指定暴力団任侠山口組系の組織は県内からなくなり、事実上は4組織となっている。

 組織犯罪対策課によると、県内で活動実態のある組織は指定暴力団の六代目山口組系が3組織、神戸山口組系が1組織で、構成員と準構成員は計約270人。10年前と比べ組織数は3分の1、人数は半分となった。

 本江組は組員が県内にはおらず、組長は六代目山口組系の他団体に移籍したという情報がある。同課は、確認を進めるとともに、組長に本江組の解散届を提出させる方針だ。

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