仏像巡って歩行訓練 富山の特養ホーム

仏像レプリカの前で語り合う利用者と釜井さん(右手前)

■施設内にレプリカ3体 

 富山市新庄町の特別養護老人ホーム「あしたねの森」にある仏像のレプリカ3体が、利用者の活力を呼び起こしている。仏像は小矢部市芹川で仏壇店を営む釜井裕さん(51)が無償で貸し出したもので、施設内の3カ所に配置。利用者は仏像を巡るため積極的に歩くようになり、リハビリや生きがいづくりに役立っている。(報道センター・安多萌子)

 あしたねの森では、施設内に歩行訓練用のコースを設け、スタンプラリーのように巡ってもらう仕組みをつくっている。イベントで施設の取り組みを知った釜井さんが、自発的に運動する手助けになればと、趣味で集めた仏像を歩く目安にしてもらおうと提案した。

 奈良や京都の寺にある大日如来、孔雀(くじゃく)明王、不動明王の像のレプリカ3体を、1階のホールと10メートルほど離れた廊下、2階の廊下にそれぞれ置いた。

 「3体をあえて離すことで利用者の歩く距離が自然に増えた」と、あしたねの森を運営する社会福祉法人アルペン会(富山市小西)の佐治直さん(42)は話す。椅子に座りがちでリハビリに消極的だった利用者も「お参り」のためによく歩くようになったという。

 仏像の前では利用者が集まって会話する姿も見られる。「かつて大日如来を見た記憶がある。懐かしい思い出にうれしくなった」と言う利用者も。古い記憶を呼び起こすことは認知症予防につながると言われている。

 釜井さんは「自分の仏像が人の役に立っているならうれしい。これからも人とのつながりや思いがけない効果が生まれることを期待している」と話した。

 今後、要望に応じて仏像を福祉施設や病院などに貸し出す予定。問い合わせは、釜井さん、電話090(7084)4761。

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