豚コレラワクチン 県内農家 接種まで不安 消費者買い控え懸念 

 農林水産省が27日に豚への予防ワクチンを接種する「推奨地域」に富山県を選び、関係者らは安堵(あんど)した。ただ、実際の接種までに2カ月ほどかかる見通しで、ウイルスを媒介する野生イノシシが増大する県内で感染を防ぎ続けることはできるのか、養豚農家は不安と緊張の日々が続く。

 県内では7月末に富山市で感染した野生イノシシが発見されて以降、これまで計20頭の感染イノシシが見つかり、19ある全ての養豚場がワクチン接種を求めていた。

 石井隆一知事はこの日、省庁回りで訪れていた東京都内で取材に応じ、「大臣の英断に感謝したい」と述べた。接種に向け必要な準備を進めるとともに、養豚場の防疫体制や野生イノシシの捕獲を引き続き強化する方針を示した。また、接種にかかる費用は国庫負担が2分の1で、残りを県などが負担する。このため知事は同日に高市早苗総務相と会い、特別交付税措置で支援するよう求めた。

 県養豚組合連合会の新村嘉久会長(54)は「ワクチンは感染防止に有効な手段」とした上で「接種時期が分からないので、それまでは自分たちにできる防疫を徹底したい」と気を引き締めた。精肉や加工品の流通が、ワクチンの接種地域外でも事実上認められたことには「富山県をはじめ、豚コレラの発生県に寄り添った判断だ」と評価した。

 ただ、今後は消費者の買い控えなどの懸念も生まれる。県農産食品課は「ワクチンを接種した豚肉を食べても健康に影響はない。風評被害が生じないよう、周知に力を入れたい」とした。

 ■対策強化要望 意見書採択へ 県議会運営委

 県議会は27日、議会運営委員会を開き、共産党提案の「豚コレラ対策の強化を求める意見書」を議運メンバーで30日の本会議に提出することを決めた。採択される見通し。

 「ワクチンの緊急接種を行わなかった」などと政府対応を批判する一部の文言を削除したことで、自民、公明両党も賛成に回った。共産党議員が紹介議員となった豚コレラ対策を求める請願も採択した。

© 株式会社北日本新聞社