パ王者・西武の野球が豪快過ぎる 逆転勝利数と逆転負け数から見える各球団の特色

逆転勝ち、逆転負けともにリーグ最多だった西武【画像:パーソル パ・リーグTV】

逆転勝利数は西武、逆転勝利の割合は楽天がトップ

 先制された試合をひっくり返しての逆転勝利は、ファンにとってもたまらないものだ。パ・リーグのレギュラーシーズンは西武が2連覇を達成したが、逆転勝利、逆転負けが多かったのはどの球団だったのだろうか。今回はチームの総得点、総失点にもアプローチしながら、逆転劇をより多く見せたチームと、逆転負けを喫しやすかったチームがどこだったのか見ていきたい。

 今季のパ・リーグにおける逆転勝利数のチーム別ランキングは、以下の通りとなっている。(数字は全て西武が優勝を決めた9月24日時点)

1位:西武 34勝
2位:楽天 33勝
3位:ロッテ 31勝
4位:ソフトバンク 28勝
5位:オリックス 23勝
6位:日本ハム 22勝

 リーグ最多の逆転勝利数を記録したのは、ペナントレースを制した西武。やはり、強力打線による圧倒的な得点力が作用している。僅差の2位には新加入の浅村栄斗内野手とブラッシュ外野手が活躍した楽天がつけ、ホームランラグーンの設置で本塁打が激増したロッテが3位となった。

 一方、最後まで西武と優勝を争ったソフトバンクは、逆転勝利数では4位という結果に。順位、得点数ともに5位の日本ハム、それぞれ6位のオリックスはやはり逆転勝利数も少ない。苦しい戦いを強いられた今季を象徴する数字の1つとなっている。

 続けて、チームの全勝利数のうち、逆転勝利がどの程度の割合を占めているのかを計算した結果を紹介したい。

1位:楽天 33/70 47.14%
2位:ロッテ 31/69 44.93%
3位:西武 34/80 42.50%
4位:オリックス 23/59 38.98%
5位:ソフトバンク 28/76 36.84%
6位:日本ハム 22/64 34.38%

 最も高いのは楽天で、2番目がロッテ。昨季の順位はそれぞれ最下位、5位と低迷していたが、得点力の向上により劣勢をひっくり返す試合が増えたことが、成績向上につながったといえる。最も少なかったのは日本ハムで逆転勝利数とその割合は、チーム成績ともある程度シンクロしている。ソフトバンクは逆転勝利の割合では5番目。逆転勝利数(4位)からさらに順位を下げている。投手力を生かした先行逃げ切りの形が確立されていたともいえそうだが、終盤に試合をひっくり返す展開が少なかったのは痛かったか。

西武は逆転負け数もリーグ最多、手痛い敗戦をはねのけての優勝だった

 次に、今季の逆転負け数のチーム別ランキングを見ていきたい。

1位:西武 36敗
2位:オリックス 32敗
3位:ロッテ 30敗
4位:楽天 25敗
5位:ソフトバンク 24敗
6位:日本ハム 22敗

 逆転勝利数がリーグ最多だった西武は、逆転負け数でもリーグ最多に。チーム防御率はリーグ最下位で、投手陣は今季も安定感を欠いた。特に前半戦は平井克典投手と増田達至投手に負担が集中。後半戦には平良海馬投手の台頭と小川龍也投手の復調もあって持ち直したが、トータルでは手痛い逆転負けが多かった。

 オリックスはリリーフ防御率4.31とリーグ唯一の4点台で、こちらも試合の締めくくりに苦慮していた。ロッテはリリーフ防御率3.66とそこまで悪くはなかったが、8回を任せるセットアッパーが最後まで定まらなかった。逆転負け数の多さが、リーグトップのリリーフ防御率3.08を記録した楽天とのAクラス争いでも明暗を分ける形となった。

 ソフトバンクは故障者が続出する中でもブルペンは安定し、リリーフ防御率は3.28。逆転負け数はリーグで2番目に少なかった。日本ハムもリリーフ防御率3.52とまずまずで、逆転負けはリーグ最少。苦戦を強いられたシーズンにあって、投手陣は意地を見せた。

 勝利数と同様に、逆転負けがチームの全敗戦数の中でどの程度の割合を占めているのかについても紹介する。

1位:西武 36/61 59.02%
2位:オリックス 32/74 43.24%
3位:ロッテ 30/70 42.86%
4位:ソフトバンク 24/61 39.34%
5位:楽天 25/68 36.76%
6位:日本ハム 22/72 30.56%

 西武は全敗戦の6割近くが逆転負けで、チームとしての傾向が顕著に表れている。オリックスとロッテも4割以上だが、ソフトバンクも全体の負け数が少ないこともあって4割近い数字に。とりわけ夏場は酷暑もあってかリリーフ陣が不安定になる場面があり、各チームとも手痛い逆転負けを喫するケースは少なからずあった。

 そんな中で、日本ハムの数値の少なさは目を引く。今季は得点力不足に悩まされたこともあり、そもそも先制した試合が多くなかったという見方もできるかもしれないが、リードした試合の多くを勝ちに結びつけるという、投手陣の踏ん張りが見て取れる結果となった。

西武は総得点も総失点も最多、鷹は得点力不足が響く

 参考に、チーム総得点と総失点のランキングも紹介していきたい。

チーム得点数
1位:西武 755得点
2位:千葉ロッテ 642得点
3位:楽天 607得点
4位:ソフトバンク 578得点
5位:日本ハム 555得点
6位:オリックス 530得点

チーム失点数
1位:西武 688失点
2位:オリックス 628失点
3位:ロッテ 611失点
4位:日本ハム 580失点
5位:楽天 577失点
6位:ソフトバンク 556失点

 逆転勝ち、逆転負けともにリーグ最多の西武は、チーム総得点と総失点でもそれぞれ最多。乱打戦が多かったことが、逆転試合の増加にもつながったと考えられる。ソフトバンクは失点がリーグ最少と投手陣は奮闘したものの、得点はリーグ4位とやや伸び悩んだ。西武とは対照的に、ロースコアの試合が多かった。

 日本ハムは逆転勝利数、逆転負け数がともにリーグ最少だったが、得点数はリーグ5位、失点数は同4位と、先述の西武ほど極端な結果にはならず。しかし、得点数2位、失点数3位というロッテの得点経過の激しさ。得点数3位、失点数5位の楽天の安定感といった要素は、それぞれチーム別の逆転試合の傾向にも反映されていると言えそうだ。

 西武はリーグ最多失点の投手陣を強力打線がカバーし、21年ぶりのリーグ連覇を達成。逆転勝ち、逆転負けもリーグ最多で、その戦いぶりは派手だった。西武と優勝争いを演じたソフトバンクはリーグ最少の失点数を誇り、逆転勝ち、逆転負けともに少なかった。3位の楽天は、逆転勝ちが多く逆転負けは少ないという、理想的な傾向を示していた。

 以上のように、逆転試合の勝敗数にもそれぞれのチームの特色が出ているといえそうだ。10月5日に始まる「2019 パーソル クライマックスシリーズ パ」においても、シーズン同様の鮮やかな逆転劇が生まれるか。各球団の傾向を頭に入れたうえで、観戦してみてはいかがだろうか。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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