向陵旋風9回逆転

高岡向陵-高岡商 9回表高岡向陵2死一、三塁、勝ち越しの中前適時打を放つ安田=県営富山

■高岡向陵 4-3 高岡商

 【評】土壇場で逆転した高岡向陵が初の頂点に立った。1点を追う九回2死から2四球と敵失で同点とし、続く安田が決勝打を放った。先発の宝里は伸びのある直球を主体に6安打3失点で完投し、逆転劇を呼び込んだ。

 高岡商は七回に前馬のスクイズと石黒の犠飛で一時リードを奪ったが、九回の守備でミスが相次いだ。(石黒)

■安田が好機逃さず決勝打  九回2死走者なし。絶体絶命の場面でも高岡向陵は持ち味のスモールベースボールを貫いた。快進撃の勢いを追い風に、逆転劇につなげた。

 今大会はエース宝里の好投を見据えたロースコアでの戦いを基本にし、1点を取りにいくため送りバントを多用した。準決勝までの4試合で19犠打を記録し、この日も犠打で好機をつくって得点していた。

 1点を追う九回2死から植野が粘って四球で出塁した。得意の犠打ができない場面で、代打の荒井に送られたサインは待球だった。「相手投手は制球を乱していた」と檜物政義監督。荒井はバントの構えで揺さぶり、四球を選んだ。

 これで高岡向陵は息を吹き返した。続く小西の打った高くはずむゴロが相手の悪送球を誘って同点に。次打者の安田は内角寄りの直球をセンターにはじき返した。「気持ちよかった」。会心の当たりで決勝点を奪った。

 近年は目立った成績を残せず、今大会も優勝候補ではなかった。安田は「勝ち進む中で『勝利への意欲』が強くなり、勝つための声掛けができるようになった」と言い、主将の平瀬は「九回は誰も諦めていなかった。声で相手にプレッシャーをかけた結果だ」と振り返った。

 チームが大会で成長を遂げながら快進撃する様子は「旋風」と呼ばれる。檜物監督が33年前に率いたチームが起こしたのが「新湊旋風」。初優勝をつかんだ今度の「向陵旋風」はどこまで続くか。(社会部・石黒航大)

■高岡商、守備乱れる  高岡商は1-2の七回に2得点してリードを奪ったが、優勝を目前にした最終盤で踏ん張りきれなかった。吉田真監督は「精神的なもろさが出た」と厳しい表情だった。

 序盤に2失点し、相手ペースで試合が進んだ。七回の守備で右翼手の宮崎がダイビングキャッチの好プレーを見せ、その後の攻撃で流れを引き寄せるかと思われたが勢いはいまひとつ。相手守備のミスもあって勝ち越しに成功するも、勝利まであと1アウトとなった場面で2四球、失策と乱れて逆転を許した。主将の藤井は「日頃の甘さが試合に出た」と、土壇場で隙が出たことを悔やんだ。

 2季ぶりの北信越地区大会に向け課題は「全てです」と吉田監督。選手層は分厚いだけに、精神面でのチームの成長があれば、強さを発揮できるはず。藤井は「普段からの厳しさが足りない。心の弱さをなくし、北信越で絶対に優勝する」と雪辱を誓った。(社会部・久保智洋)

高岡向陵-高岡商 9回表高岡向陵2死一塁、同点のピンチにマウンドに集まる高岡商の選手

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