緊急指令 ナイト・レンジャー! アルバム完全再現ライヴを目撃せよ 1983年 10月26日 ナイト・レンジャーのアルバム「ミッドナイト・マッドネス」がリリースされた日

10月に14度目の来日公演が予定されているナイト・レンジャー。

わたしが彼らのライブを初めて観たのは2度目の来日の東京厚生年金会館大ホールだった。そして、それはわたしにとって洋楽ライブの童貞を捨てた記念すべき出来事でもあった。このライブ初体験で彼らの虜になってしまったわたしは、その後の来日公演もすべて観ている。

もちろん今度の来日でも昭和女子大学人見記念講堂の公演をプレリザーブで早々に押さえ、追加で BLITZ 赤坂の公演が出たのでそれも押さえた。

いったい彼らの何に惹かれるのか。わたしの場合、そこに細々とした説明的な理由はない。とにかく気持ちいいロックだから、ということに尽きると思う。

ヘヴィメタル原理主義からすると、ポップだったりメロディアスなバラードだったり、衣装が黒革や鋲打ちじゃなかったり、短髪だったりする彼らは “範疇外” となるのかもしれない。しかし、その健全性というか、爽やかで気持ちが弾む音こそアメリカンロックを愛するわたしが彼らを支持する理由なのだと思う。

その気持ちよさの原動力となっているのはメンバーの人柄だったりするが、中でもアーム奏法で有名なギタリストのブラッド・ギルスという存在が欠かせない。

そういえば、みなさんは “フロイド・ローズ” という名前をご存知だろうか? 元々は開発した人の名前ではあるけれど、ギターのトレモロアーム(ユニット)の商品名である。

よくギタリストがアーム状の棒を掴んで “キュイ~ン” とピッチを上下させているのがトレモロアームである。

ギターを弾く人ならご存知だろうが、アームというのは弦をたわませたり逆に引っ張ったりするので、チューニングがよく狂うのである。フロイド・ローズはその弦を端で固定してしまうので、チューニングが狂わないという極めて画期的な発明だった。

中学の頃、初めて彼らの曲を TVK で観た時、一緒に観ていた友達が「フロイド・ローズのアーム、すげえな!」的なことを言った。わたしは、当時まだギターを手にする前でフロイド・ローズをよく知らず、てっきりナイト・レンジャーでアームをギュンギュンやっているギタリストの名前だと思い込んだのだった。

後に軽音楽部の可愛い女の子に大笑いされることで、その思い込みが間違いであると知ったのだが、フロイド・ローズ改めブラッド・ギルスのギタープレイや人柄には惹かれ憧れ続けた。

それは今でも変わらずだ。例えば、我が家のクルマは柄にもなくアウディなのだが、これはわたしが輸入車が好きとかドイツ車にこだわりがあるからではない。

ナイト・レンジャーのセカンドアルバム『ミッドナイト・マッドネス』のライナーに載っていたメンバー紹介のアンケートの中に、それぞれの「好きな車」という項目があって、ブラッド・ギルスが「アウディ」と答えていたことが選択の起点となっている。

その時もアウディをよく知らなかったわたしは、ブラッド先生が好きなクルマという理由のみで「いつかはクラウン」ならぬ「いつかはアウディ」を心のなかに掲げたのだった。

そして、約30年かけてその目標を実現したわけだ。まぁ、今じゃ当の本人もアウディではなく別のクルマに乗ってると思うけれど。

話がかなり横道に逸れてしまったが、彼らにはまだまだ「ユー・キャン・スティル・ロック・イン・アメリカ!」と頑張り続けてほしいものである。

カタリベ: 阿野仁マスヲ

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