【MLB】「全てを日本に」エ軍職員・野村沙亜也さんが抱く夢 ノムさんは「打撃の助言も…」

エンゼルス球団職員の野村沙亜也さん【写真:編集部】

故・野村沙知代さんの孫で昨年6月からエンゼルスで勤務、昨年は「最優秀従業員」に選ばれた

 17年12月に虚血性心不全で亡くなった野村沙知代さんの孫にあたるエンゼルス球団職員の野村沙亜也さん。「野球に携わる仕事がしたい」と昨年6月からゲストリレーション部門の1人として勤務し、主に球場を訪れるファンの案内役として奮闘していた。仕事のこだわりや将来の夢、さらには「おじいちゃん」と呼ぶ野村克也氏(野球評論家)から学んだことなどを語った。

 沙亜也さんは米ロサンゼルス出身だ。ピアス大学を経て、13年から3、4年間日本に滞在。英語、日本語ともに堪能だ。持ち前の明るさと語学力を駆使した丁寧な接客ぶりが高く評価されている。

「この球場に居られることに、素晴らしさを感じています。何千もの観客がいる中で、球場の雰囲気を味わえるのですから。日本のファンの方たちは、私が日本語を話すことに関して、どことなく心地良さを感じているのかと思います。英語を話せない方もいる。そういうことを頭に入れつつ、彼らと関わりあったり、手を貸してあげることは個人的には楽しいです。私の能力の限りで最高のサービスを提供し、球場のお客様たちをサポートすることに幸せを感じています」

 父は元プロ野球選手のケニー野村氏。野球との出会いは少女時代だった。野村克也氏がヤクルト監督を務めていた時には、家族で米アリゾナ州ユマでの春季キャンプへ。その時の写真をスマートフォンに保存してある。

「球場にいた最初の思い出は、3~4歳くらいだったと思います。あまり思い出せませんが、神宮球場にいたことを覚えています。当時おじいちゃんはヤクルトにいました」 

 昨年はエンゼルスの「最優秀従業員(エンプロイ・オブ・ザ・イヤー)」を受賞。克也氏は大喜びだったという。

「おじいちゃんは野球が家族の中で続いていることを嬉しく思っています。私はプレッシャーも感じています。期待も多く寄せられているので。けれども、そのおかげで私はもっと頑張ることができています。おじいちゃんは私の仕事を非常に支持してくれています」

野村克也さんは「バットスイングのアドバイスもしてくれるんです」

 克也氏は名捕手、名監督、さらに野球評論家として長く野球界に貢献している。「おばあちゃん(沙知代さん)は家族にとって、心の拠り所。亡くなってからは、おじいちゃんと可能な限り連絡を取っています」という偉大な“祖父”から学ぶことも多いという。

「おじいちゃんはゼロから始まって努力をして、素晴らしい野球人生を築いてきた。それを教訓として、私も野球の世界、人生で努力して自分の夢を叶えたいと思っています」

 草野球もするという沙亜也さん。克也氏から「バットスイングのアドバイスもしてくれるんです」と笑顔で明かした。

「おじいちゃんは野球のことなら何でも元気が出るんだと思います。野球に関わるのが幸せなんです。とっても優しいです。『次いつ来るの?』とよく聞かれます。次に日本に行った時に、野球のことについてもっと話をするのが楽しみです」

 エンゼルスで活躍する大谷翔平投手との交流はない。それでも、「確実に、オオタニは彼が“柱”となる選手だということを証明していると思います。素晴らしい投手で、バットスピードもハンドアイ・コーディネーション(視覚と手の連動性)も素晴らしいです。怪我から復帰した時に、己の足で立ち上がってくれると期待しています」とエールを送る。自身の夢も見えてきている。

「エンゼルス球団で働くうちに、いくつかの技術を身に着けました。業界内で多くの人と出会い、この業界のことをより理解するようになりました。どのような機会がこの先待っているかわかりませんが、将来的に、学んだこと全てを日本に持って帰りたいと思っています」

 いつか私も日米の野球の橋渡しに――。大きな夢を胸に米国の地で活躍を続けている。(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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