長総大・藤田准教授ら優秀賞 津波の人的被害評価法で 社会マネジメントシステム国際シンポ

論文が優秀賞に選ばれた藤田准教授=長崎市網場町、長崎総合科学大

 長崎総合科学大工学部の藤田謙一准教授らが、地震の津波による人的被害について、避難者の歩行速度のばらつきや避難施設数などを基に評価する方法を提案した論文が、9月に東京であった「社会マネジメントシステム学会(SSMS)」の国際シンポジウムで優秀賞を受賞した。
 SSMSは高知工科大(高知県)に事務局があり、社会科学、工学双方の視点から社会の経営システムの構築・運営を支援することを目指している。1年半~2年に1回、国際シンポを開催。2年前のシンポで国内外の研究者らが応募した約100編の論文のうち、藤田准教授らの論文など計2編が優秀賞として表彰された。
 2011年の東日本大震災では多くの人が津波の犠牲となり、近い将来の発生が予測される南海トラフ巨大地震に向け、各地で防災計画の見直し・作成が進められている。藤田准教授と防衛大学校の矢代晴実教授は、250メートル四方のエリアごとに津波に巻き込まれる「人的被害」を表せば被害分布を容易に把握でき、計画作成に役立つと考えたという。
 南海トラフ巨大地震などで被害が甚大になるとみられる太平洋側の実在の地域を研究対象に選んだ。避難は、海岸線から遠ざかる方向に避難タワーや高台などまで歩行するとし、鉄道踏切の遮断機は下りたままで渡れないとの想定。夏場は海岸線のエリアが海水浴客で混雑するため歩行速度が他のエリアより遅くなるとした。
 その結果、地域全体の避難意識が高いと人的被害は減少するが、踏切そばの被害は多かった。避難タワーなどの避難施設を新設または新規指定すると踏切そばを含め全体の被害はさらに減った。夏場は海岸線の被害が多く、避難施設が増えても減少幅は少なかった。歩行速度が遅いことに加え、津波到達時間が短いことが要因という。
 藤田准教授は「教育や訓練などで避難意識を向上させれば被害減少につながる。避難タワーの新設などハード対策と組み合わせればさらに減る。夏場の海岸線の被害を抑えるには目につきやすい場所にタワーなどを設置することが重要」と指摘。さらに「高い所に避難することが難しい高齢者、妊婦、入院患者らをどう助けるか、今後検討する必要がある」としている。

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