フォーミュラE:女性ドライバーのシモーナ・デ・シルベストロがポルシェと契約。開発ドライバーに就任

 シングルシーターを中心にキャリアを重ねながら、現在はオーストラリア大陸に渡ってVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーに参戦しているシモーナ・デ・シルベストロが、ポルシェと契約を交わした。2019/20年に行われるシーズン6からワークス参戦を開始するABBフォーミュラE選手権のテスト兼開発ドライバーに就任すると同時に、複数のラウンドに帯同する予定となっている。

 現在31歳のシモーナは、F1のザウバーでテストドライバーを務めた経験を筆頭に北米のインディカー、そしてアンドレッティからフォーミュラEに参戦するなど、ここまでシングルシーター・シリーズを中心に経験を積んできた。

 そして2017年から心機一転、南半球の大陸に渡りツーリングカーの世界に飛び込み、ケリー・レーシングに加入してニッサン・アルティマをドライブ。重量のある“ティントップ(ハコ車)”の流儀をマスターすべく今季も奮闘を続けている。

 そのシモーナは2018年のVASCシリーズ参戦に並行して、11月にはフォーミュラEを戦うベンチュリーに加入しテストドライバーの役割を引き受け、サウジアラビアでのミッドシーズンテストなどでGen2モデルの電動フォーミュラを経験してきた。

 つまり、今回の契約はシモーナにとってポルシェへの移籍という形になり、ポルシェのモータースポーツ活動史上初の女性ファクトリー契約ドライバーということにもなる。

 このニュースはVASCでの将来が不確実な状況でもたらされたこともあり、ケリー・レーシングとの3年契約が満了する2019年末をもって、オーストラリアのシリーズからは身を引くとの見方が強い。

 今回結んだポルシェとの契約にはヴァイザッハ本社でのシミュレーター作業と、すでに発表されているアンドレ・ロッテラーとニール・ジャニのレギュラーペアとともに、サポートドライバーとして複数のイベントで現地に赴くことも含まれている。

「この世界的に有名なブランドとともに働けるのは、私にとって本当に光栄なこと」と、ポルシェ加入の喜びを語ったシモーナ。

契約にはヴァイザッハ本社でのシミュレーター作業と、サポートドライバーの役割が含まれる
3年契約で挑んだ豪州のツーリングカー、VASCでは大成ならずも、FEに再びの活路を見い出す

「タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチームのテスト兼開発ドライバーとして、新たに始まる自分の役割を心から楽しみにしているわ。フォーミュラEを離れてからのこの数年、シングルシーターでは経験できない多くのことを学んできた。その蓄積を活かして、ポルシェが成功を収められるよう最善を尽くすつもりよ」

 シモーナは、つい先日開催のVASC第11戦オークランド・スーパースプリントの日曜レース2で、セーフティカー絡みのレース状況も味方につけ、シリーズ最上位の7位フィニッシュを記録。現在はドライバーズランキング20位につけ、初年度の24位、2018年の23位を上回る成績を残している。

 シーズン6のフォーミュラEは11月22日のサウジアラビアで開幕戦を迎えるが、シモーナはVASC最終戦ニューキャッスル500へのエントリーを優先し、ケリー・レーシングのニッサン・アルティマで(おそらく)最後のレースを戦うことを決めている。

 そのため、彼女のポルシェでの初仕事は今月10月末にスペイン・バレンシアで開催されるプロモーターテストになるとみられている。

 一方、シモーナと同時に同じ役割での起用が発表されたトーマス・プレイニングは、シモーナに代わって開幕戦に帯同。2017年からポルシェ・ヤング・プロフェッショナル・ドライバー・プログラムに所属する21歳も、WEC世界耐久選手権やELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズなどと並行して、この電動フォーミュラ・シリーズに関わっていくことになった。

「レーストラックで最新の『ポルシェ99Xエレクトリック』をドライブするのはどんなフィーリングか、今から楽しみで待ちきれない気分だ」と、ポルシェ・スーパーカップでランキング3位になっているプレイニング。

「フォーミュラEへのデビューシーズンでポルシェをサポートできるのは本当に光栄だし、この未来志向のプロジェクトにスタート時点から参加できるのは素晴らしいことだと思っているよ」

VASC最終戦でのレースを優先し、2019/20FE開幕戦は回避となる。「女性史上初の契約を、とても誇りに思う」
2019年はWECのGTE-Amクラスを中心に活動したトーマス・プレイニング(右)も、同様の役割を担う

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