映画「ロケットマン」クライマックスを彩るエルトン・ジョン再生の歌! 1983年 7月3日 エルトン・ジョンのシングル「アイム・スティル・スタンディング」がリリースされた日

『ロケットマン』観てきましたー!『ボヘミアン・ラプソディ』と比べられがちな本作品ですが、負けず劣らずとても良かった!と、ご報告させてください。

エルトンの曲がミュージカル風に使われており、『ボヘミアン・ラプソディ』と比べるより、これは『ラ・ラ・ランド』とライバルと言ってもらっても良い感じ。エルトンご本人が製作総指揮で参加していることもあって、ストーリーに上手いこと自身の曲を当てはめて、新しい魅力を引き出しており、極上のミュージカルエンターテイメントとなっておりました。

『キングスマン:ゴールデン・サークル』でエルトンと共演しているタロン・エガートンが完璧な吹き替えを行なっているのも見所ですね。私はエルトンの張りのある声が大好きですが、もう、完璧でした。実際にエルトンにはタロンは何でも質問して良いと言われていたらしく、エルトンに成りきる為にかなり突っ込んだところまで話しあっていたそうですから、エルトン自身が表現したい “自分” がかなり全面に出ていたんじゃないかと思っております。

実はエルトン・ジョン、私はリアルタイムで聴いていたのは80年代以降なので、知っている彼はすでに大御所。いつも自信たっぷりに歌い、チャリティなどの慈善活動も積極的に行って、Sir の称号までもらっちゃって、派手でいつもキラキラしたセレブという言葉の先駆けなイメージ。ドラッグ、セックス、買い物依存症などの問題を抱えていたダメな部分の彼をよく知らなかったのです。

でも、映画では当時のエルトンのダメな人間像とか、「ここまでやる?」っていうところまで落とした表現してました。自身の半生の映画でありながらダークな部分までしっかり描いていて… エルトンの懐の大きさを改めて感じずにはいられません。さすがのイギリスの姐さん!! 私の中のエルトンはイギリスの若草物語、派手で社交に長けている “長女” 扱いです。

エルトン曰く、描きたかったのは自分の成功の輝かしい軌跡ではなく、「孤独からのドラッグへ依存」「子供時代がどれだけその後の人生に影響するか」の警鐘。そして墜落してからの再生へ立ち向かう「勇気」と、自分を取り囲む大事な人たちへの「感謝」。キラキラした「俺ってすごい」映画ではなかったわけです。

それはそれとして、私的の見所を二つ挙げていいですか?

一つは「僕の歌は君の歌(Your Song)」の誕生シーン。作詞家のバーニー・トーピンと一緒にエルトンの母のアパートに住んでいた売れる時代のごくごく普通の朝。バーニーに渡された歌詞を読んだ途端、思いが溢れ始めパジャマのまま、ピアノの前に座り、鍵を叩き、曲が産まれていくシーン。

エルトンはこの時、バーニーのこと大好きだったんですよね。多分友情以上に。そして、バーニーも答えはしないけど、深い絆を感じていて。ああ、これって、二人の心が通じあってるなぁって、多幸感満載の美しいシーンです。私、何回でもこのシーンは見られます。

そして、クライマックスの「アイム・スティル・スタンディング」。更生施設に入ったエルトンをバーニーが訪れて歌詞を渡し、それがエルトンへの再生の応援のメッセージだった訳ですけど。この歌詞を読んでエルトンが久しぶりにピアノの前に座り、ためらいながらピアノを弾き始めるシーン。

この時の目に力が宿っていき、そして施設の廊下でこの歌を歌い出し、再生していく姿が泣けます。

デクスター・フレッチャー監督インタビューで読んだのですが、元々は曲が始まって施設のドアを開けるところで脚本は終わっていたらしいのですが、最後に大きなエンディングをどうしてもやりたくて、スタジオを説得してお金を出してもらって「アイム・スティル・スタンディング」の PV の再現に至ったんだとか。更生施設でのまだ戸惑っているような、自分への問いかけのような歌い出しのアレンジからの、あの有名な海辺での力強い PV への移行が秀逸です。

元々の PV と映画のシーンではエルトンの衣装の色が違うんですが、この色がエルトンの再生へのゼロからの再生の表明を表しているようでまた良いんですよー。しかも、被っている帽子のついてるリボンがレインボーフラッグカラー(AIDS で亡くなった人を悼むための黒を加えたもの)なあたり、エルトンの気持ちが反映されてますよね。

ちょっとネタバレになってしまいましたが、劇場で見られなかった方も DVD などで見てほしい映画になってます。是非是非ーー!

カタリベ: ユリンベ

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