市場

 長崎市中心部にある勝山市場で最後の1軒となっていた中華料理店がのれんを下ろした。9月末、市場の入り口にある店は閉店を惜しむ常連客らでにぎわっていた▲市場内に足を踏み入れると、ひっそりと静まり返っていた。通路の両側には色あせた花屋や協同組合の看板が並び、時の流れを感じさせた▲スーパーが進出し、消費者の生活スタイルが変わり、市場は県内でも次々と姿を消している。ここ数年でも新大工町市場、長与中央市場などが幕を閉じた▲筆者が通っていた小学校の前にも市場があった。狭い通路の両側にはいろんな店がひしめきあっていた。学校で飼っていたニワトリやウサギの餌をもらうために市場に行った。八百屋では大根の葉っぱを、パン屋では食パンの耳を分けてもらった▲市場は買い物の場であるだけでなく、地域の人たちと関わり合いながら文化を育て、住民の大切な記憶として刻まれてきた。だからこそ、閉店と聞き付けて多くの客が訪れたのだろう▲小学校前の市場に立ち寄ってみた。近くにあった文房具店やおもちゃ屋はなくなり雰囲気は随分変わっていたが、市場は健在だった。学校の飼育小屋は今もあるのだろうか。餌をもらいに行っているのだろうか。要らぬ心配をしながら、いつまでも市場が続いてほしいと願った。(豊)

© 株式会社長崎新聞社