高齢者に賃貸物件を 川崎の不動産会社、情報サイトに掲載

高齢者向け仲介に注力する上野さん(右)と松田さん(中央)=川崎市高津区

 川崎市高津区の不動産会社エヌアセットが、賃貸物件への入居を希望する高齢者のサポート態勢を強化している。9月からは県内の不動産会社として初めて、高齢者向けのポータルサイト「R65不動産」に物件情報の掲載を開始した。同社の担当者は「お年寄りの住まい探しは社会的課題。不動産業者に対応が求められている」と意義を強調する。

 同社は2008年設立。高津区内に2店舗を構え、主に賃貸仲介事業や賃貸管理事業を手掛けている。

 高齢者の部屋探しは一般的に難しいとされている。大家側には、孤独死の恐れや、高齢のため働けなくなり家賃の未払いが発生するなどのリスクがあるためだ。孤独死の場合には、インターネット上の「事故物件サイト」に掲載されると家賃が下がるなど賃貸経営に影響が及ぶ。

 高津区は市内のほかの地域と比較し若年層が多く、貸主側にとっても「部屋を貸すなら若い人」との考えが働くケースが多いという。「現在は昭和後期に建てられたアパートなどの賃貸住宅が建て替え期を迎えており、それに伴う高齢入居者の立ち退きも少なくない」。同社の広報担当松田志暢さんは、区内の状況をそう説明する。

 そこで、同社は9月から65歳以上向けの物件のみを取り扱うサイト「R65不動産」に物件情報の掲載を始めた。「以前から高齢者の賃貸仲介には取り組んできたが少子高齢化社会を迎え、会社として明確に意思表示をしたかった」と松田さん。貸主に安心してもらえるよう、電気の使用量を一定期間記録し、異常を検知したら電子メールで知らせる機器や、入居者が万一孤独死に至った場合に家賃や原状回復費用を補償する保険なども用意した。

 同社営業部の上野謙部長は「駅から遠く、築年数のたった物件でもお年寄りは気にしないケースもあり、大家側にも早く借り主が見つかるなどメリットもある」と指摘。サービスを開始して約1カ月。サイトを介しての成約はないものの、貸主からは入居者のあっせんを要望する問い合わせが来ているという。

 高齢者の部屋探しは何件も問い合わせが必要な割には不動産業者に入る手数料が低額など課題も多い。上野さんは「貸主側にも丁寧に説明し、高齢者の入居に対応できる物件を増やしていきたい」と話している。

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