数字で示される「オレオレ詐欺で母親が狙われる理由」

詐欺師「母さん?オレ。久しぶり。元気にしてた?」
女性「あらカズ君?久しぶり。どうしたの」
詐欺師「実は会社の金を使い込んじゃってさ…/事故を起こしちゃって示談金が必要なんだ…/女性を妊娠させてしまって…」
というのが、典型的なオレオレ詐欺(各種シチュエーションがあります)。

娘を名乗る「アタシアタシ詐欺」ではなく、息子を名乗る「オレオレ詐欺」が圧倒的に多く、被害者は父親ではなく母親。

なぜこの母&息子パターンで、詐欺が行われてしまうのでしょうか。そこには、“金づる”としての「母親」に関するデータの裏づけがありました。


オレオレ詐欺の被害状況

まずは、オレオレ詐欺の被害状況についてみてみましょう。実はこのオレオレ詐欺、一度改名されたのをご記憶でしょうか。その名も「母さん助けて詐欺」。残念ながら定着しませんでしたが、「母親」がターゲットになりやすい点に警鐘を鳴らしたという点では、意味があったともいえます。

平成30年中の特殊詐欺の認知件数は1万7,844件、被害総額は約382.9億円。警察庁や消費者庁をはじめとする多くの省庁や団体から注意喚起や情報提供が行われていますが、オレオレ詐欺の被害は件数的にも金額的にも大きな位置を占めているのが実情です(図表1・2)。

図表1:手口別の認知件数

図表2:手口別の被害額

出典:警察庁のホームページより

いざというときにお金の援助をしてくれそうな人は?

なぜ、よりお金を持っていそうな父親ではなく、母親が狙われるのでしょうか。しかも、「オレオレ」といいながら会社の使い込み補填や交通事故の示談金をせびるということは、いい大人の息子からの要求ということになり、相手としての親も高齢ということになります。

第一生命経済研究所が今年1月に実施した「今後の生活に関するアンケート」によると、「いざというときにお金の援助をしてくれる人」としてあげられたのは、「母親」がトップ。これに「誰もいない」が続き、「父親」は母親より10ポイント以上低い割合で3位、というランキングでした。

図表3:いざというときにお金の援助をしてくれる人<複数回答>

いくつになっても「お母さん」頼み

これを、性・年代別に比べたものが図表4です。これによると、なんと50代の男性の2割以上、女性の3割以上が、さらに60代でも男女ともに約1割が「いざというときにお金の援助をしてくれる人」として母親を頼っていることがわかります。

60代の子世代の母親といえば概ね80代以上、場合によっては90代。この、世の中の「お母さん依存度」の高さが、オレオレ詐欺で母親が狙われる背景にあるようです。

図表4:「いざというときにお金の援助をしてくれる人」として母親をあげた人の割合

ちなみに、データからもわかるように、母親依存が高いのは男性よりもむしろ女性。だとすると、女性から電話がかかってくる「アタシアタシ詐欺」のほうが危ないのでは?と思うかもしれません。

しかし、高齢になっても母娘はコミュニケーションを密にとっているケースが多く、「母さん、アタシだけど…」と詐欺電話をしても、声でわかる上に、日頃から互いの状況をある程度把握していることなどから、「アンタ誰?」となること請け合いです。

つまり、「普段あまりコミュニケーションがないにもかかわらず、とっさのときに頼ってきた息子」という状況が最も危ないのです。だとすると対策としては、2つ。「息子と日頃からよくコミュニケーションをとっておく」か、「たまに連絡してきた息子(を名乗る人)を信じない」のが懸命でしょう。

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