副業年収4000万円、motoさんが実践する「普通のサラリーマン」の発信術

2018年が「副業元年」と称されるなど、本業の収入だけに頼らない生き方が日本のサラリーマンの間でも徐々に浸透しているようです。しかし、会社から任されている職務から離れた時、一体自分にどんな「稼ぎ方」があるのか、ピンとこない人も少なくないのでは? 自分のスキルや名声だけで勝負できる自信のある人は、少数派でしょう。

motoさんは会社勤めを続ける傍ら、副業や転職についての情報発信を続けている人物です(転職に関する記事はこちら)。Twitterでのフォロワー数は7万人を超え、執筆したブログ記事の広告などによる副業年収は4,000万円を突破しました。8月には自身が実践してきた“稼ぎ方のノウハウ”について綴った『転職と副業のかけ算』(扶桑社)を出版しています。決して有名人でない私たち普通のビジネスマンが、個人アカウントを活用することでどうやって稼げる副業につなげられるか。直撃しました。


――motoさんはホームセンター勤務からリクルートなど4回転職を重ね、今はベンチャー企業の営業部長として年収を1,250万円まで高めたサラリーマンです。一方、高校生の頃からネット上での情報発信も続け、今は自身の転職経験や副業についてブログなどを執筆することで本業の3倍超の副業年収を稼いでいます。「ブログ執筆を通じて広告収入を得る」副業の形は珍しい手法ではありません。でも、motoさんのように際立ったキャリア遍歴やスキルを持つ人でないと、個人アカウントで注目を集めて稼ぐやり方は難しいのでは……とも尻込みしてしまいます。

moto:僕も普通のサラリーマンです。むしろ、普通のサラリーマンだからこそ、こうして副業でお金を稼ぐことができているのだと思います。仕事をやっている人なら、少なからず誰にでも“コンテンツ”になるような知識や経験はあるものです。自分から見たら当たり前の知識だから気づかないだけ。でも、その知識や経験をTwitterなどで発言することで、価値に気づけるんです。。

例えば、僕がブログで書いているのは主に転職の話です。転職サイトはみんなが使っていますが、数がたくさんあるのでどれをいいか分かっていない人も多い。僕はこれまで4回転職してきましたが、実際にSNSなど発言すると「どの転職サイトを使ったらいいんですか?」といった相談が多かったんです。そこで、「実際に使った側からの体験談」をブログでまとめたのが、副業を本格的に始めたきっかけです。このコンテンツには多くの反響がありました。僕は全ての転職サイトを利用していましたが、その経験談にニーズがあったわけです。

また、僕は転職経験があるだけでなく、人材業界にもいたことがあるので内情がわかっていました。業界の人間なら誰でも知っている、転職エージェントや転職サイトがどういう仕組みで成り立っているのかという背景もわかっていたので、「転職エージェントをどう使うべきか」という裏側の視点でも情報発信できたのです。

このように、自分のいる業界の話を出すだけでも、(他業界の)普通の人々は知らない情報があったりします。自分にとって「当たり前」のことでも、まずは発信してみるのが大事。例えば自分が誰か友人などに話して「役立った」とか「知らなかった」と言われた話を、SNSなどで発信していくのがいいと思います。

こういったSNSでの発信を続けていると、自分の伝える力とか「どんな情報に需要があるのか」というニーズを把握する感覚が磨かれていきます。僕の場合、Twitterの140字という限られた文字数の中でどう伝えるのか?と意識することで表現力が鍛えられました。「自分の業界のことをどうやって伝えたら、同業種でない人たちにも分かってもらえるか」と試行錯誤してきた経験が、本業の仕事でも役立っています。

――とはいえ、無名の人間がSNSで意図して脚光を浴びるのは、なかなか一筋縄ではいかなそうです。昨今では自分の業界のネガティブな暴露話や炎上狙いの過激な発言などで、PV(ページビュー)を稼ごうとしている人も少なくないです。これらは有効な手法なのでしょうか?

moto:何を目的にするかにもよるんですが、僕の場合、炎上要素はない発信を心がけています。大切なのは「自分をちゃんと応援してくれる人」にフォロワーになってもらうことなので。炎上による注目はそもそも続かないし、自分の“資産”にならないと思います。SNSはあらゆる層の人が見ているところなので、見ている人によって発言に対する解釈が違うということを意識することが大事です。僕は発信する際に様々な角度から考えて発信するようにしています。

なぜ炎上系の発信だと“資産”にならないかというと、自分を応援してくれるちゃんとしたフォロワーが積み上がらないためです。たった10人でもいいから、自分に(いつも)反応してくれる人こそが本当の自分のフォロワーです。そういうフォロワーを増やすためには、人の役に立ったり共感されるコンテンツを発信する「GIVE」の姿勢が大切だと思いますね。あくまで人の役に立ったり共感されたりするコンテンツを作るべきです。

――ちなみに、普通のサラリーマンがSNS上で個人アカウントとして発信するとしたら実名と匿名のどちらがお勧めですか?

moto:極論を言えばどちらでもいいと思うのですが、大前提として考えないといけないのは、サラリーマンとして情報発信するのだから、あくまで本業の迷惑になってはいけないということですよね。Twitterの場合には140字という特性上、自分の発信が意図しない伝わり方をすることもあるので、場合によっては悪い風に発言を捉えられてしまって、本業に支障をきたす可能性もあります。一方で、コンテンツとして魅力がなければ価値が生まれません。だから「せっかく面白い内容だから、なんとか発信したい」と思うなら、匿名でもいいと思います。

しかし、今の時代は匿名であっても会社に個人のアカウントがばれることはよくあります。そうなったときに問題が起きないコンテンツ内容にしておくことも、自己防衛策としては大切。匿名でも実名でも、人に面と向かって言えないことを書くのは、自分のためにもやめておいたほうがいいと思います。実際に、僕も「moto」という匿名で発信をしていますが、会社の同僚には実名と匿名アカウントの両方を持っている人もいますよ。それでも問題にはなっていません。会社に(個人アカウントでの発信が)ばれた時に、問題が起きないコンテンツ内容にしておくことも大事ですね。

――なるほど……。普通のサラリーマンでも、個人発信を通じて注目され稼げる可能性がだんだんと見えてきました。ただ、普段から文章を書き慣れていない限り、いきなり長文のブログ記事を投稿したりするのはハードルがちょっと高いと感じる人もいそうですね。

moto:最初のステップとしては、自分が興味を持ったニュースへのコメントを発信することがいいと思います。僕もそこから始めました。Twitterのようなオープンな場で意見を発信して、どんな反応があるか見ることで、自分のどんな意見がヒットするのか把握していたんです。自分が当たり前だと感じていたことが、(SNS上で)「確かにそれはあるよね!」などと、思った以上の「共感」を集めることがあります。そこからニーズを捉えていくんです。

だから最初から「コンテンツを作ろう」などと思って仰々しくやらないほうがいいと思います。大切なのは、自分が日頃思ったことや感じたことを取りあえずなんでも書いてみること。いきなり長文を書いてもなかなか刺さる記事は生み出せませんから。

――いっとき、「ブログで稼ぐにはとにかく毎日たくさんの記事を書くべき」などと指南している有名ブロガーもいましたね。どんな話が世間に注目されるか分からない一般人は、とにかくたくさんのコンテンツをネット上で発信するべきなのでしょうか?

moto:僕はあくまで量より質が大事だと思っています。誰にも読まれないコンテンツを量産しても意味はありませんし、「100本の記事を書くこと」自体が目的になってしまいかねないので。

今の時代、情報は溢れているので、自分が経験して得た独自の情報を出すことに注力することが大切なんです。あくまで“自分オリジナル”のコンテンツを出さないと評価されない。ただ毎日書くことを目的にするより、「自分の経験が誰の役に立つのか?」を考えて作るほうが、長い目で資産にもなります。数をこなすことで記事の書き方がうまくなっていくのはいいことですが、それが目的のようになってしまってはダメですよね。

何より、僕の経験上、副業は自分が楽しめるものでないと続きません。副業はただでさえ“副”の仕事なので、面倒くさくなったり疲れてしまったりしたら、やらなくなってしまう可能性が高いです。まずは自分にとって「苦にならない」ことから始めるのがいいと思いますよ。

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moto(もと)
1987年生まれ。短大卒業後、ホームセンター勤務を皮切りに大手人材会社、リクルートなど4度の転職を経て現在はベンチャー企業の営業部長を勤める。本業の傍らTwitterやブログで転職や副業の情報を発信するブログ「転職アンテナ」を運営。ブログやSNSによる副業年収は4,000万円。著書『転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方』(扶桑社)は発売7日で4万部を突破。

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